2010 Fiscal Year Annual Research Report
microRNAを介した遺伝子発生制御機構と大脳新皮質形成
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21770248
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
柴田 幹士 独立行政法人理化学研究所, ボディプラン研究グループ, 研究員 (50391975)
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Keywords | microRNA-9 / Foxg1 / Cajal-Retzius cells / corticogenesis / subcorticogenesis |
Research Abstract |
microRNAは、さまざまな生物の器官発生に関わる様々な遺伝子を標的とし、その転写後の発現量を主に負に調節していることが知られている。microRNAの標的遺伝子の同定は、microRNAそれ自体の機能のみならず、器官発生そのもののメカニズムを知る上でも重要である。脊椎動物においてmicroRNA-9は端脳に強く発現するが、microRNA-9-2/3の二重変異マウス端脳を解析した結果、microRNA-9は、神経前駆細胞の増殖を制御する転写因子であるFoxg1, Nr2e1, Gsh2等の発現を調節することがわかった。神経分化初期(E12.5)のmicroRNA-9-2/3の二重変異マウス端脳皮質領域においては、Foxg1タンパク質の発現が上昇しており、radial gliaの増殖が亢進していた。一方で最も初期に分化する神経細胞であるCajal-Retzius細胞と、他のearly-born neuronが減少していた。しかしながらE15.5といった後期においては、Foxg1タンパク質の発現の上昇は認められなかった。これはFoxg1 mRNAの3'UTRに対するmicroRNA-9の活性が何らかの調節を受けている事を示唆する結果であった。我々はRNA結合タンパク質であるElav2の発現がE15.5から上昇し、さらに、Elav2がFoxg1 mRNAの3'UTRに結合することで、microRNA-9の活性を阻害することが分かった。しかしさらに発生が進むと、逆に神経前駆細胞の増殖は減少することが分かった。これはNr2e1タンパク質の発現の減少を伴っていたが、意外な事にmicroRNA-9はRNA結合タンパク質であるElavl1やMsi1と協調的にNr2e1 mRNAの3'UTRに作用して翻訳を正に制御することが分かった。microRNA-9-2/3の二重変異マウス端脳の外套下部においてはFoxg1やGsh2といったタンパク質の発現がE15.5においても増加しており、神経前駆細胞の増殖の亢進は維持されていた。これはElavl2が外套下部では発現していないためと考えられた。以上の結果から、大脳の発生において、microRNA-9は、RNA結合タンパク質とともに神経前駆細胞の増殖を制御する遺伝子群の発現を微調整していることが明らかになった。
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