2009 Fiscal Year Annual Research Report
化学療法剤による腎障害の発現機序解明および予防策の確立に関する研究
Project/Area Number |
21790242
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
矢野 貴久 Kyushu University, 大学病院, 技術職員 (90532846)
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Keywords | 腎障害 / 抗菌薬 / アポトーシス / ネクローシス / カスパーゼ / ミトコンドリア |
Research Abstract |
(研究目的)抗菌薬や抗腫瘍薬といった化学療法剤は、薬剤性の腎障害を引き起こすことが広く知られており、その頻度は他の薬剤と比べても顕著に高い。しかしながら、化学療法剤による腎障害の詳細な発現機序には未だに不明な点が多くあり、排泄促進を目指した輸液療法のほかには、有効な予防策や治療法は確立されていないのが現状である。本研究では、培養腎細胞を用いて腎障害評価モデルを作製し、ゲンタマイシン(GM)やバンコマイシン(VCM)、アムホテリシンB(AmB)による腎障害発現機序の解明を行った。 (研究方法)化学療法剤であるGMやVCM、AmBをブタ近位尿細管由来LLC-PK1細胞に曝露して細胞障害を誘導し、WST-8法により細胞生存率の変化を測定した。アポトーシスおよびネクローシスの判定には、Annexin V/Propidium iodideの二重染色法およびTUNEL染色法を用い、蛍光顕微鏡およびフローサイトメトリーにより評価した。カスパーゼ活性は、蛍光前駆基質を用いたアッセイ法にて測定した。ミトコンドリア機能評価は、ミトコンドリア膜感受性試薬JC-1を用いた。 (研究成果)GMやVCM、AmBをLLC-PK1細胞に曝露すると、濃度および時間依存的に細胞生存率が低下し、いずれの薬剤もミトコンドリア機能異常を惹起した。一方で、AmBによる障害はネクローシスであり、その障害発現には細胞内CaやMAP(mitogen-activated protein)キナーゼが関与していたが、GMやVCMによる障害ではアポトーシス細胞が顕著に増加すると共に、細胞内カスパーゼ3活性が有意に上昇した。加えて、VCM(4mM, 24h)によるTUNEL陽性細胞の増加がカスパーゼ3阻害剤zDEVDにより顕著に抑制されたことから、VCMによる腎細胞障害はカスパーゼ活性化に基づくアポトーシスであることが明らかとなった。
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