2009 Fiscal Year Annual Research Report
正常造血ならびに白血病発症に体内鉄動態が及ぼす影響についての解析
Project/Area Number |
21790914
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 宏和 Osaka University, 医学系研究科, 特任助教(常勤) (40360846)
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Keywords | 造血 / 鉄過剰 |
Research Abstract |
本研究は生体内過剰鉄による細胞増殖、分化、死の制御機構、さらには幹細胞の未分化性維持機構についての分子メカニズムを明らかにすること、さらには過剰鉄がもたらす病態についてその機序を明らかにすることを目的としている。 本年度はマウス血液細胞を用いたin vitroの鉄負荷モデルの解析ならびにES細胞からの血球分化系(OP9 system)において鉄負荷が及ぼす影響についての解析を行った。マウス骨髄より造血幹細胞を含むc-kit+Scal+lin-(KSL)分画を分離し、サイトカイン存在下で7日間培養した。この系に硫酸アンモニウム鉄(FeAS)を添加した場合、細胞内に鉄の蓄積とともに活性酸素種ROSの産生が認められ、著明な細胞死が誘導された。FeASにより細胞死誘導に関与するp38MAPKの活性化が認められ、抗酸化剤及びp38MAK阻害剤により細胞死が回避された。一方造血支持能を有するMS5との共培養系では、表面抗原解析ならびにコロニーアッセイの結果から、FeAS添加によりKSL細胞の未分化細胞の維持、前駆細胞の増殖、成熟血球への分化いずれもが障害されていた。またOP9 systemによる血球発生過程にFeASを添加した場合、赤芽球の分化段階が前赤芽球の段階で停止し、多くの細胞に細胞死が誘導されるのと同時に、大型で多核の異型性を伴った細胞の出現を認めた。一方顆粒球、巨核球、B細胞の発生分化はFeAS添加によりほとんど障害されなかったが、多くの細胞に細胞死が誘導された。またMS5単独培養の系にFeASを添加した場合においても細胞内への鉄蓄積、ROSの産生が認められ、細胞接着や造血支持に関わる種々液性因子の発現プロファイルの変化が認められた。 以上の結果から過剰鉄は生体内で造血細胞を直接傷害するだけでなく、骨髄支持細胞の機能変化をもたらすことで造血を抑制している可能性が示唆された。今後はマウス生体に直接鉄を負荷することによる影響について解析を実施する予定である。
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Research Products
(5 results)