2010 Fiscal Year Annual Research Report
正常造血ならびに白血病発症に体内鉄動態が及ぼす影響についての解析
Project/Area Number |
21790914
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
田中 宏和 大阪大学, 医学系研究科, 助教 (40360846)
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Keywords | 過剰鉄 / 造血幹細胞 / ストローマ細胞 / 活性酸素種 / 造血器腫瘍 |
Research Abstract |
本研究では、過剰鉄が正常造血ならびに造血器障害発症に及ぼす影響について検討するために、マウス血液細胞を用いたin vitroでの解析、ならびにin vivoの鉄負荷モデルの解析を行った。その結果、急激な遊離鉄負荷が正常造血細胞に対して、細胞内活性酸素種(reactive oxygen species,ROS)の蓄積、さらにはROSによるp38MAPKの持続的活性化を介して未分化な細胞により強く細胞死を誘導すること、また赤血球系の分化異常など無効造血の病態形成に関与していること、一方で骨髄支持細胞においては、造血支持に重要な接着因子の発現やサイトカイン、ケモカインなどの発現変化もたらすことで造血を抑制することを見出した。一方、MDSの原因遺伝子の一つであるAML1dC,あるいはMDSからAMLへの移行に関わるEvilをマウス造血細胞に導入し、鉄負荷の影響について検討を行った結果、これらのクローンは遊離鉄負荷による細胞死に抵抗性を示すことから、過剰な鉄負荷は正常造血を抑制する一方でMDSクローンの選択的な増殖を誘導し、その病態の進展に関与している可能性が示唆された(本研究成果については、現在論文投稿中である)。 これらの結果は、鉄過剰が造血システムに及ぼす影響、さらには鉄過剰と造血器障害の進展との関連を明らかにしたものであり、種々造血器障害の発症機構や治療の方向性を体内鉄動態の観点から考える上で意義深いものと考えられる。
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Research Products
(17 results)