2010 Fiscal Year Annual Research Report
神経栄養因子の女性生殖領域における役割の包括的検討とその臨床応用
Project/Area Number |
21791539
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Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
河村 和弘 秋田大学, 医学部, 講師 (10344756)
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Keywords | 神経栄養因子 / 卵胞発育 / 胚発育 / 着床 / 絨毛発育 |
Research Abstract |
妊娠マウスより採取した着床前期胚および子宮における神経栄養因子のリガンド・受容体の発現の検討から、brain-derived neurotrophic factor(BDNF)とその受容体であるTrkBが胚盤胞の栄養外胚葉(TE)に発現しており、さらに子宮にも発現していることがmRNAおよびタンパクレベルで確認された。BDNF/TrkBシグナルはPi3K経路を介して胚盤胞のoutgrowthの促進、matrix metalloproteinase活性を増加させ着床を促進させる作用を有していた。BDNF/TrkBはTEが分化して発生する胎盤trophoblastにも発現が認められたことから、このシグナルが着床後の胎盤および胎児発育にも重要であることが考えられた。実際、BDNF/TrkBシグナルはtrophoblastの増殖を促進し、アポトーシスを抑制した。In vivoではBDNF/TrkBシグナル抑制により胎盤発育が抑制され、その結果胎児発育も抑制された。従って、BDNF/TrkBシグナルは着床とその後の胎盤・胎児発育に重要であることが明らかとなった。我々は、更にtrophoblastが悪性化した絨毛癌細胞においてもBDNF/TrkBシグナルが癌細胞の増殖促進・アポトーシス抑制作用を持つことをin vitroおよびin vivoの実験により見出し、このシグナルの抑制が絨毛癌の新たな分子標的治療となる可能性を報告した。また、trophoblastが子宮外で生着、増殖することで発症する異所性妊娠の進展におけるBDNF/TrkBシグナルの重要性を、異所性妊娠モデルマウスを確立することで検討し、このシグナルの抑制が異所性妊娠におけるtrophoblastの増殖抑制、アポトーシス誘導をもたらすことから、新たな異所性妊娠の薬物療法となりうることを示した。
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