2021 Fiscal Year Annual Research Report
Interdisciplinary Study on Interaction between Social Theory and Higher Education in Japan and Germany 1871-1945: Based on Newly Found Material
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21H00783
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Research Institution | Bukkyo University |
Principal Investigator |
野崎 敏郎 佛教大学, 社会学部, 教授 (40253364)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田中 智子 京都大学, 教育学研究科, 教授 (00379041)
恒木 健太郎 専修大学, 経済学部, 教授 (30456769)
鈴木 宗徳 法政大学, 社会学部, 教授 (60329745)
三笘 利幸 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60412615)
内藤 葉子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (70440998)
メンクハウス ハインリッヒ 明治大学, 法学部, 専任教授 (70515915)
橋本 直人 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324896)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 日独学術交流史 / 日本社会思想史 / ドイツ社会思想史 / 日本の大学史 / ドイツの大学史 |
Outline of Annual Research Achievements |
ドイツ社会学説の動向とその意義については、恒木・鈴木・三笘・内藤・橋本が担当し、ヴェーバーを軸に、世紀転換期から二十世紀にかけての「科学」のありかたをめぐるいくつかの論争問題について探究した。そのなかで橋本は、その論争が、自然科学的な方法論と社会科学的な方法論との差異に関連していること、また新カント派等の哲学的な立場と社会諸科学との新たな関係が生まれつつあったことを明らかにした。恒木は、ブレンターノとゾンバルトの敵対関係、およびフランツ・オッペンハイマーのゾンバルトへの姿勢の再検討を試みた。また内藤は、優生思想の影響を受けた母性保護連盟の思想動向に対して、市民女性運動家であるマリアンネ・ヴェーバーが、事実と規範の区別を重視する立場から批判したことに注目した。 近代日独関係史および日本の高等教育に関してはメンクハウスと田中が担当した。メンクハウスは、日普修好通商条約を、近代日独関係の出発点と位置づけ、その法解釈に取り組んだ。また田中は、従来の帝国大学史研究が、ドイツとの関係に偏って進められてきたことを批判的に再検討し、帝大やラートゲンと、「自由主義・イギリス系」経済学者・田口卯吉との関係を考察した。 ドイツの高等教育に関しては野崎とメンクハウスが担当した。野崎は、1893年から1894年にかけて、フライブルク大学移籍をめぐって、プロイセンの文部官僚フリードリヒ・アルトホフとヴェーバーとの確執が、大学の自治をめぐって先鋭化していたことを解明した。またメンクハウスは、ラートゲンが1893年にマールブルク大学に着任する際、アルトホフが、同大学に国家学系のポストを新設したことに注目した。 なお、コロナ禍のため、2021年度に実施予定だった海外渡航(野崎および恒木)を、2022年度に繰り延べて実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍のため、海外調査の予定を繰り延べざるをえない状況が続いてきた。また、不測の事態により、一旦準備していた渡航を急遽取り止め、延期せざるをえなくなるというケースも生じた。それでも、その後可能な日程で渡航調査を再開し、新知見を得ることができた。 また、コロナ禍でライプツィヒの史料保存館が業務を全面的に停止したことから、ラートゲンに関する重要史料の提供が大幅に遅れたが、ようやく2022年度末に史料のコピーが送付された。しかしコピーの状態があまりよくないためもあって、判読作業にはかなり手間取っている。 海外調査および国内調査によって得られた新知見は、いずれも学術的に重要なものであり、従来の史実理解を更新し、部分的には通説を覆すか刷新するものと見込まれる。これらの調査によって判明した諸事実は、学術雑誌等に掲載し、また本研究グループ内で共有した。2022年1月に開催したシンポジウムは、2020年度に実施するはずだったのを繰り延べて実施したものだが、それまでの研究成果をまとめることができ、またドイツ大学史研究者や日本大学史研究者の参加も得て、学際的な視野を確保することもできた。 反面、各自の研究成果を照らし合わせ、日独の社会科学交流史と日独の大学史とを統合して理解するという点において、まだ十分でなく、所期の目的を果たすためには、ディスカッションを積む必要がある。
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Strategy for Future Research Activity |
コロナ禍による物理的制約が大きかったが、海外調査・国内調査ともにかなりの成果を挙げることができた。そこで、以下の方針で臨むことにする。 第一に、これまでの調査結果を集約し、グループ内で共有する。 第二に、近代日独の学者たち・学生たちによる社会科学の共有の実相がさまざまな点で解明されたので、今後、こうした日独交流史と日独における大学の歩みとを照合し、《近代日独における社会科学と大学》という新たな枠組を定立し、総合的・包括的・学際的な研究成果を目指す。 第三に、こうした研究成果の発信方法としては、小規模なシンポジウムの形式が適切だと思われ、本研究活動の終了時には、そうしたシンポジウムによる成果を、目にみえる形で調えたい。また、日独の多くの社会科学者や歴史研究者、および一般読者層にも訴求力のある刊行物としてまとめる準備にも取りかかりたい。
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Research Products
(19 results)