2021 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
21K01110
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
佐藤 史人 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50350418)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ロシア / 憲法裁判 / 憲法アイデンティティ |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、第一に、憲法アイデンティティをめぐる理論的な対抗関係について検討を行った。まずロシアおよびポーランド、ハンガリーの憲法裁判において憲法アイデンティティがいかなる文脈のなかでどのような意味を担って登場したのかを検討し、それらがナショナル・アイデンティティと同旨のものとして把握されていることを確認し、西欧、とりわけドイツにおいて論じられている憲法原理、人権規範をその内容とする憲法アイデンティティとは異なるものとして理解されていることを明らかにした。また、EU圏における憲法アイデンティティ論についてもあわせてフォローし、特に、同概念を最もリベラルに把握としていると思われる論者の一人であるClootsの議論を検討した。 第二に、ロシアにおける憲法アイデンティティ論台頭の背景を探るべく、ロシアの政治体制の権威主義化と憲法裁判の関連性について検討し、R.Sakwa、L. Shervtsovaのロシア政治論、LGBTをめぐるロシア憲法裁判の展開、ファシズム名誉回復罪・領土割譲煽動罪などの実務についての分析を行った。以上の研究の成果の一部は、11月にモンゴル国立大学で行われた国際シンポジウム、Third International Conference on Fundamental Issues of Constitutional and Administrative Law: Challenges in the Era of "Crisis" において口頭発表した。 第三に、ロシアを比較法的に分析するための素材として、旧ソ連圏、とりわけウズベキスタンの司法動向についてフォローした。また、2015年当時に脱稿し、本年度に公刊された論考(鮎京正訓ほか編『新版アジア憲法集』(明石書店、2021年)所収の「ウズベキスタン共和国」)の内容をアプデートする際に、当該知見を活用した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度は、当初に予定していた研究方法・論点の整理、西欧の動向の確認については、概ね予定通りに実施することができた。また人権裁判所とロシアの相互関係についてもある程度検討することができた。他方で、パンデミックが継続し、ロシアへの渡航が不可能であったことに加え、ウクライナ紛争が深刻化したことから、現地訪問(ロシア)についてはまったく目処が立たず、予定を消化することができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、憲法裁判所の判例分析を中心に研究を進め、あわせてハンガリーの憲法動向に関する調査を実施する。また、ロシアへの渡航が非常に困難であることから、サンクトペテルブルク(ロシア連邦憲法裁判所)の訪問、実務家へのインタビューについては代替方法を検討し、ロシアの研究者とのオンラインによるインタビューの実施などを試みる。
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Causes of Carryover |
コロナ禍によりロシアへの渡航が実現できなかったほか、物品(書籍)の調達にも遅れが生じたため。物品費相当分は次年度に使用するほか、コロナ禍・ウクライナ紛争の動向を探りつつ、ロシアへの渡航の可否を検討するほか、ハンガリーなどの他の研究対象国への研究旅行を優先的に組織する。
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Research Products
(2 results)