2021 Fiscal Year Research-status Report
心的視点取得過程の個人内メカニズムの解明と促進方法の開発
Project/Area Number |
21K02989
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Research Institution | Kyoto University of Advanced Science |
Principal Investigator |
神原 歩 京都先端科学大学, 人文学部, 准教授 (30726104)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武藤 拓之 京都大学, こころの未来研究センター, 特定助教 (60867505)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 心的視点取得 / 空間的視点取得 / 自己中心性 / 身体性認知 |
Outline of Annual Research Achievements |
心的視点取得とは,相手の立場に立って相手の気持ちを想像・理解することを指し,円滑な社会生活に肝要である。本研究課題は,その心的視点取得を効果的に促進する方法を開発することを目的としている。 近年, 心的視点取得は,相手の位置からの見え方を想像する空間的視点取得と, 自分の身体表象を相手の視点の位置まで移動させるという心的シミュレーション (以下,仮想的身体移動) を行うという点で共通する可能性が指摘されている。そこで研究目的を達成する第一段階として令和3年度は, 空間的視点取得を促進することが知られている操作を心的視点取得にも適用し, 心的視点取得が促進されるかについて実験的検討を行った。具体的には,空間的視点取得では, 対象と向き合う角度の乖離が小さくなるほど仮想的身体移動が容易となり反応時間が短縮することが示されている。そこで, 心的視点取得時にも仮想的身体移動が生じているなら, 対象と向き合う角度が小さくなるほど心的視点取得が容易になると仮説を立てた。そして, 相互作用する2人の心的経験が乖離するタッピングパラダイム (Griffin & Ross, 1991)において 対象と向き合う角度を0度(正対)条件と180度(横並び)条件とを設け, 両条件の心的視点取得の正確さを比較した。その結果, 0度(正対)条件では, 180度(横並び)条件よりも, 心的視点取得が正確になることが示された。 また, 正対条件において対象への親密性が高まるという結果は,仮想的身体移動を伴うことでその対象への親密性が高まるというErle & Topolinski (2017) の結果と一致するものであった。したがって, 0度と180度の2条件しか比較できていないといった限界はあるものの,心的視点取得が空間的視点取得と同様に仮想的身体移動に支えられている可能性を示したといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和3年度の研究により,心的視点取得は空間的視点取得と同じく,対象との身体角度差によってその容易さが異なる可能性を示すことができた。またそれだけでなく,心的視点取得にも仮想的身体移動が媒介している可能性も示した。これらの点は,引き続き心的視点取得促進方法を検討するにあたり,重要な発見であったと考えられる。ただし,その可能性は極めて限定的な実験状況で確認されたにすぎない。今後より多角的な検討が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
心的視点取得過程における仮想的身体移動の存在を明らかにするために,仮想的身体移動を促進すると考えられる姿勢だけでなく,仮想的身体移動を妨害すると考えられる姿勢の検討も取り入れて研究を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
論文掲載費用として残しておくため。
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