運動習慣による病的疼痛の予防効果の検証とその機序の解明

2021 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 21K11180
• Research Institution: Kanazawa Medical University
• Principal Investigator: 大道 美香 金沢医科大学, 医学部, 非常勤講師 (30581079)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 大須賀 浩二 愛知医科大学, 看護学部, 教授 (40378013) ; 大道 裕介 金沢医科大学, 医学部, 准教授 (50506673)
• Project Period (FY): 2021-04-01 – 2025-03-31
• Keywords: 運動習慣 / 慢性痛 / 予防 / 光遺伝学 / アロディニア

Outline of Annual Research Achievements

運動習慣によるフィットネスの向上は、抗酸化能を向上させ、病的疼痛の発症において重要な予防因子になると予測される。身体不活動により病的疼痛を誘発可能なモデル（ギプス固定後慢性痛：CPCPモデル）ラットを用い、モデル処理前に予防を目的とした自発的な運動を負荷する検討を進めてきた。運動の量や期間依存的に病的疼痛行動の拡大が抑制され、モデル処理前の運動が病的疼痛に対し予防効果を有する傾向が明らかとなってきた。しかしながら、自発運動を用いた系において、運動性の個体差が非常に大きく、再現性のある運動量を確保できないという問題点が生じ、予防的運動における量や期間と病的疼痛の発症予防との関係を明確にする上で、大きな障壁であった。そこで本年度は、運動習慣による病的疼痛の予防効果について検討を進める前段階として高い運動性を有するラット（高運動ラット）を安定して産生できるシステムの構築を目指した。
ラットをランニングホイールが設置された運動環境へ順化させた後、1週間走行させた。ある一定条件をクリアした雄を選択し、複数世代の継代を行った結果、高運動ラットを産生可能なシステムを確立することができた。高運動ラットを2週間自発運動環境に曝露し、フィットネスを向上させた後、CPCPモデル処置を行い、病的疼痛評価を行った。広範囲（両側の足底、下腿部の筋、尾部）において発症する機械痛覚過敏行動が減弱傾向を示した。以上の結果から高いフィットネスは、身体不活動による慢性痛を予防できる可能性が示唆された。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

今年度は、運動習慣による病的疼痛の予防効果を決定的なものにするために、高運動ラットの産生システムの構築を目的に研究を遂行してきた。高運動ラットの出生率が90％を超えるスクリーニング条件を設定することができ、その条件で継代飼育を行ってきた。さらに高運動ラットの病的疼痛の予防効果を検証するために機械痛覚過敏行動の評価を行い、広範囲に拡大する機械痛覚過敏行動が減弱傾向を示した。さらに触覚アロディニアの発現を明らかにするため、Aβ線維にロドプシンチャネルを発現したW-TChR2V4トランスジェニックラット（ChR2ラット）を用い、この継代飼育に高運動ラットの雌を用いて、高運動ラットを産生する継代システムを構築中である。高運動ラットの条件をクリアしたChR2ラットの出生は確認されているが、出生率が90％を超えるまでに至っておらず触覚アロディニアの評価までには至っていない。

Strategy for Future Research Activity

今年度の結果から、高運動ラットの病的疼痛の予防効果が確認されつつある。その結果を踏まえて今後も引き続き予防効果の検証のために高運動ラットの産生システム構築の完成を目指し、継代飼育を続行する。また運動習慣の期間設定を0日、2週間、4週間と３群を設け、運動期間による病的疼痛行動の評価を行う。
さらに病的疼痛行動評価の１つである触覚アロディニアを評価するために使用するW-TChR2V4トランスジェニックラット（ChR2ラット）と高運動ラットの雌との交配・継代を継続し、ChR2高運動ラットの出生率を上昇させ、安定した継代システムを確立させ、触覚アロディニアの評価を実施する予定である。

Causes of Carryover

本年度、運動ラットの産生の検討が主となり、遺伝子解析まで行うことができなかった。そのため次年度に行う遺伝子解析の予算として合算し生化学的解析に使用する予定である。