2022 Fiscal Year Research-status Report

Influence of spinal long fusion on activities of daily living and development of effective postoperative rehabilitation treatment

Research Project

Project/Area Number	21K11241
Research Institution	Kyushu University
Principal Investigator	川口謙一九州大学, 大学病院, 准教授 (30621370)
Project Period (FY)	2021-04-01 – 2024-03-31
Keywords	日常生活動作 / 脊椎長範囲固定 / リハビリテーション治療
Outline of Annual Research Achievements	この研究の目的は、進行した脊柱変性疾患に対する脊椎長範囲固定後の日常生活動作（ADL）制限およびその動作時の下肢関節運動や殿筋・下肢近位筋の活動パターンの変化を解析し、術後のリハビリテーション治療や姿勢・生活指導にフィードバックしていくことである。脊柱変形に対する手術が普及し、良好な疼痛軽減や脊柱アライメント獲得が可能となったが、一方で脊椎固定による可動性低下によって特に体幹前屈動作を伴うADLには影響がでやすい。基本的ADLにおいて、下肢の可動域や筋活動パターンの変化などが生じ、局所的な負荷の増大による新たな障害発生などが危惧される。よって、脊椎長範囲固定後の患者に対して、3次元動作解析と表面筋電計を使用した基本的ADL（歩行、立ち座り、段差昇降など）に関する動作および筋活動解析を行い、健常者および術前のデータとの相違点を検証することで、術後のリハビリテーション時の運動指導や姿勢・生活指導などの患者教育に応用できると考えている。高齢者に限定した症例数確保が難しいため、本年度より若年～中年者の症例も含めて検討を行っている。解析できたデータからは、術前は基本的ADLを行う際には、どの年代も凸側優位に背筋筋活動が高く、特に中年～若年者でその傾向が強かった。動作の中で、前屈や立ち座りの際には、左右差が大きかった。術後は、特に高齢者で股関節の可動域が増大しかつ殿筋の筋活動の増大を認め、これは脊柱固定後の代償性変化と考えられた。この結果より、術前からの体幹・股関節周囲筋の評価や運動療法が重要であると共に、術後のADLにおいても股関節およびその周囲筋に負荷が増大しないようなリハビリテーション治療や生活指導を行うことは、新たな障害発生の予防につながると考えられる。今後、症例数を増やして研究をすすめるとともに、バランス評価なども追加して行い、転倒予防の対策としても検証を行う予定である。
Current Status of Research Progress	Current Status of Research Progress 3: Progress in research has been slightly delayed. Reason コロナ禍の影響もあり、当初の研究計画よりも高齢者の脊柱変形患者の外来受診数が少なく、結果として手術治療となる患者も限られるため、予定した症例数のデータ測定が遅延している。その対策として、対象を若年者や中年者への拡大し、本年度はコントロールとしての健常者5例、術前12例と術後1年経過5例の計測を行った。実際に測定を行った患者においては、3次元動作解析および表面筋電計を使用した基本的ADL（歩行、立ち座り、階段昇降など）に関するデータ収集は問題なく施行可能であった。高齢者に限定すると対象症例数が少ないため、ひき続き適応年齢を拡大しつつ症例数を確保し、幅広い年代における脊柱変形患者のADLにおける関節の動きや筋活動の特徴を調査し、それらの相違点などについても検討していく予定である。
Strategy for Future Research Activity	脊柱変形を有する高齢者のリハビリテーション治療への応用を目的として、高齢者を中心として研究対象を選出していたが、外来患者数および手術適応となる症例が少ないため、若年者から中年者の患者にも対象を拡大して研究をすすめている。年齢の影響や病態の違いなどが多少生じると思われるが、脊柱変形を有し長範囲固定を予定する患者に限定するため、問題は少ないと考えている。また、関連病院などにも協力を呼びかけ、十分なサンプルサイズの確保にも努めている。研究対象を拡大したことで測定を行う患者数も増えており、術前に加えて術後1年経過時のデータ測定も順次行う予定である。また、転倒リスクの評価として、重心動揺計を使用したバランス評価も追加して行い、長範囲固定術の影響を多面的に評価していく予定である。研究成果については、今年度中にデータ解析まで行い、学会発表や論文執筆にも取り組む方針である。
Causes of Carryover	本研究の測定に必要な備品に関しては、研究開始前に備蓄していたものより使用しており、今年度も新たな購入は不要であった。研究の対象となる高齢者の脊柱変性後側弯症患者が少なく、現在、若年～中年者にも対象を拡大しつつ研究をすすめているため、3次元動作解析および筋電図測定を行う機会が増加しており、今後随時研究費を使用していく予定としている。また、重心動揺計を使用したバランス評価なども追加して行う予定としており、必要な計測機器の購入考慮している。未使用額は次年度のデータ収集および解析の経費として使用予定である。