2022 Fiscal Year Research-status Report
Practical Research on Diversified Masculinity in Seafaring
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21K12521
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Research Institution | National Institute of Technology(KOSEN), Oshima College |
Principal Investigator |
石田 依子 大島商船高等専門学校, 商船学科, 教授 (40370027)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | マスキュリニティ / 船員史 / 女性船員 / 家父長制 / 船員労働 / 資本主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
現在でも、海運界において女性の雇用が今一つ伸び悩んでいる原因は、この業界では「船員=男性」というイデオロギーが根強く定着しているということが挙げられる。本研究の目的は、「マスキュリニティの多様性」をキーワードとして、女性が男性とは一線を画した存在として船員業で活躍できることを証明し、海運界において本来の「男女共同参画」を実現することである。マスキュリニティ研究では、「マスキュリニティ」とは男性の固定的特質ではなく、女性のマスキュリニティや両性具有性など、一文化の中に多様なマスキュリニティが並存することが指摘されている。本研究では、その「多様性」を足がかりとして、「船員業」と「男性性」、つまり「マスキュリニティ」の関係性について分析し、「船員=男性」という固定観念を払拭し、女性独自のマスキュリニティとアイデンティティを活かして船員として存在することが可能だということを実証していくことであるが、本年度は昨年度に引き続き、「家父長制」にも着目して研究を行った。手法としては、我が国商船の外航・内航・貨物・客船の女性及び男性船員に対して、船員の労働内容、個々の船員としてのポリシーなどを調査し、我が国に おける船員業の諸相と実態を把握すると同時に、昨年度に引き続き、欧米の船員史と日本のそれ比較検証して、国内外にお ける船員業の諸相を探った。前者における船員へのインタビューを中心としたフィールドワークでは、主に船員の「マスキュリニティ」について検証し、後者の船員史の分析では「家父長制」に焦点を当てて分析した。調査で明らかになったことは、海運の世界においては、「家父長制」は必ずしも、支配のベクトルは「男性→女性」ではなく、「男性→男性→女性」というように、複雑化しているということである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度も新型コロナウィルス感染症の影響を受けはしたものの、研究に大きな遅れを招くようなものではなかった。当該年度の研究計画は国内での調査研究であったので、当初の予定通りに研究を進めることが可能であったからだ。船員史についての文献調査は、申請書に記載した予定では2021年度の予定であったが、本年度も引き続き実施したが、これも本来の本年度の予定であったフィールドワークの進捗に影響を及ぼすものではなかったと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
2023年度の予定は概ね、以下のような内容となる。①海外の船員の労働内容、個々の船員としてのポリシーなどを調査し、 当該諸国における船員業の諸相と実態を把握し、整理する。②女性・男性船員の労働状況につき、我が国と海外の比較を行い、国の文化や人種等の違いによって「船員業」に対する概念がどのように変化するのか、「船員=男性」のイデオロギーの存在度合い等に相違があるのかということを整理する。ただし、新型コロナウィルス感染症が5類になったとはいえ、今後の感染状況を鑑み、また周囲への影響も考慮して、海外でのフィールドワークではなく、メールやオンラインによりインタビューを行うこともありうる。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染症の感染防止対策のため、一部の女性船員へのインタビューをオンラインで実施した。
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Research Products
(2 results)