2021 Fiscal Year Research-status Report
非金銭的インセンティブによる地域課題解決のためのシステムデザインの検証
Project/Area Number |
21K12554
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Research Institution | Kyoto Sangyo University |
Principal Investigator |
塩津 ゆりか 京都産業大学, 経済学部, 准教授 (60599182)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下原 勝憲 同志社大学, 理工学部, 教授 (10395105)
荒井 壮一 秋田大学, 教育文化学部, 講師 (10633761)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 非金銭的報酬 / エージェントの多様性 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究はゲームへの参加継続手段としての「寄付」に着目し、住民の日常行動をポイント化し、ポイントが価値交換機能を持たなくても地域課題の解決に有用なゲーミフィケーションデザインとなるかを検証することを目的としている。 先行研究から被験者のタイプによって期待行動をとるメカニズムが異なることが明らかとなっているため、2021年度前半に被験者のSense of Coherenceを調査した。調査結果から被験者全体では全国平均よりも問題解決が可能と考え、解決困難であっても後悔しないタイプが多く、各地域において、とりわけ積極的な人物の存在が明らかとなった。 次に2021年後半に京都府宇治市と秋田県能代市で既開発の独自アプリを使ってフィールド実験を実施した。第1の仮説として、経済的価値がないポイントであっても、非匿名で個人間のつながりを可視化することで互酬性動機が働き、コミュニケーションを活性化できるかについて、社会ネットワーク分析を用いて検討した。分析の結果、実験開始からの時間経過に伴い、互酬性動機によるポイント贈与は減少してしまうこと、ポイントの価値づけを参加者に委ねてしまうとポイント獲得や保有の効用が不明確となり、ポイント贈与機能は利用されなくなることが明らかになった。このため、ポイントになんらかの経済的な価値を付与し、交換レートを明示するか、ポイントに経済的な価値を付与しないのであれば、ポイントから得られる非経済的な価値を定義して参加者が効用を得られるようにした上で、ポイント贈与システムを匿名化かつ簡便にし、フィードバックが得られるようにすることが必要と考えられる。ただし、Sense of Coherence調査の結果から、地域活動の参加者にもさまざまタイプがいることが明らかにであるため、非経済的な価値を提示する際には、多様性の考慮が必要と考えられる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究開始にあたって、秋田県能代市での研究協力も得られることとなり、秋田大学 荒井先生を研究分担者として追加した。 電子会議システムを利用して研究開始時より週1ないしは2回、定期的に進捗報告を行い、共同研究者と研究を進めている。あらゆる調査・社会実験に先立ち、京都産業大学と同志社大学で研究倫理審査を受審し、承認を得たのちに2021年度には合計3回の調査と社会実験を実施した。 2021年前半に実施した調査の結果を論文にとりまとめ、2021年11月の計測自動制御学会システム・情報部門学術講演会にて報告した。この調査結果から、何らかの地域活動に参加している個人のなかでも新しい物事に積極的に取り組むタイプとフォロワーになるタイプの存在が明らかになった。 2020年度実施の予備実験と2021年10~12月期に実施した社会実験の結果をもとに論文を執筆し、2022年7月の国際学会で報告を行うことが決定している。また2022年1月~3月期に実施した2回目の社会実験の結果も追加して、2022年9月の国際学会での報告に向けて投稿中である。あわせて研究協力者の追加を行うため、秋田大学でも倫理審査を受審し、承認を得た。現在、秋田での研究協力者を追加募集中である。
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Strategy for Future Research Activity |
1)2021年度前半の調査から、エージェントをリーダーとフォロワーにタイプ分けした上で、ポイント贈与のマルチエージェントシミュレーションでの分布を補正し、かつ社会実験の結果から、ポイント贈与の確率過程を組み込んだモデルを構築する。
2)秋田での研究協力者の募集を2022年夏までに完了し、既開発の独自アプリと既存のアプリを連携させて疑似RCTを実施する予定である。さらに社会実験参加者を他の地域でも募集し、同様の疑似RCTを実施する。社会実験の前にSense of Coherence調査を実施することでこのことにより地域特性や母集団の影響の程度を考察する。
3)既開発のアプリを改変し、個人にポイント贈与するだけでなく、地域課題解決のための活動そのものへのポイント贈与に変更した場合の効果を検証する。
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Causes of Carryover |
Covid-19の影響で社会実験参加者が想定よりも少なかったため、関連する費用に残額が生じた。
2022年度には社会実験参加者を追加できる見込みが立っており、実験用消耗品費、貸出用機器通信費、実験説明会関連費に充当予定である。
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Research Products
(5 results)