2021 Fiscal Year Research-status Report
comprehensive study of Hans Jonas' historical theory
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21K12825
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
戸谷 洋志 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (80807321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハンス・ヨナス / 歴史思想 / 解釈学 / 良心 / 責任 / 世代間倫理 |
Outline of Annual Research Achievements |
ハンス・ヨナスの論考「流転と永続」のなかで論じられる歴史思想を考察し、後年の倫理思想との連続性を明らかにし、論文として発表した(戸谷洋志「ハンス・ヨナスの解釈学――「流転と永続」における歴史思想の検討」『実存思想論集』XXXVI、実存思想協会、2021年、97-113頁)。また、晩年の主著『哲学的探究と形而上学的推測』のなかで論じられるヨナスの良心の概念について、その倫理思想における役割を明らかにし、論文として発表した(戸谷洋志「ヨナスの責任原理における良心論について」『メタフュシカ』52、大阪大学大学院文学研究科哲学講座、2021年、47-57頁)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、当初、最初期のグノーシス主義思想において示されるヨナスの歴史概念を分析対象にすることを予定していたが、ヨナスの哲学全体を俯瞰するとき、まず後年に展開される倫理思想における歴史概念を明らかにし、ここから遡及する形で初期の思想を分析することが、より望ましいことが明らかになった。研究実績として発表したのは、これまで主題的な研究対象とされてこなかった論考「流転と永続」における歴史概念と、人間の自由に対するヨナスの立場が鮮明に現れる良心概念を、それぞれその倫理思想の枠組みのなかで探究したものである。いずれも、ヨナスの歴史思想の全体像を解明する上で、また本研究の全体を推進する上で、欠くことのできない基礎となる知見である。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、まず、1930~1950年代の宗教哲学における歴史概念を明らかにしていく。具体的には、グノーシス主義に関連する文献と、最初期の文献である『アウグスティヌスとパウロにおける自由の問題』において展開される、脱神話化の手法を解明し、そこにおいて人間の歴史性がどのように理解されているのかを分析する。その上で、そこで示された歴史概念が後期の倫理思想へと深化発展していく過程を再構成する。また、ヨナスの師であるルドルフ・カール・ブルトマンや、マルティン・ハイデガーからの影響に注目し、特にその歴史思想をいかに受容したのかを解明していく。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルス感染拡大によって、海外調査を行うことができず、旅費および調査結果の書き起こしのための謝金を支払う用途がなくなったため、余剰が発生した。次年度使用額については、令和3年度に行う予定であった海外調査などを行うために使用する。
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