2022 Fiscal Year Research-status Report
comprehensive study of Hans Jonas' historical theory
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21K12825
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Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
戸谷 洋志 関西外国語大学, 英語国際学部, 准教授 (80807321)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ハンス・ヨナス / マルティン・ハイデガー / 未来倫理 / 歴史思想 / ナチス / 責任 / 想像力 / グノーシス主義 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、ヨナスの歴史思想に対するマルティン・ハイデガーからの影響を中心的に検討した。ヨナスは第二次世界大戦以降、ハイデガーのナチスへの加担をその主著である『存在と時間』に胚胎された傾向の現れとして解釈し、『生命の哲学』では特にそれが古代グノーシス主義の再来として論じられた。一方で、1988年に公刊されたAntwortでは、そうした傾向が『存在と時間』の決意性の概念との連関のなかで論じられ、ここからハイデガーがナチスの出現を本来的な歴史的運動として解釈した理由が説明される。こうしたヨナスによるハイデガーの解釈は、人間の責任能力の基礎としての自由を、新たな人間像を構想しうる想像力のうちに見出し、かつそうした人間像の刷新が歴史を形成すると考えたヨナス自身の歴史思想と、鋭いコントラストを示している。ここから本研究では、『責任という原理』でヨナスによって展開される未来倫理的な歴史思想を、ハイデガーの哲学の批判的克服に企図として解釈した。これらの成果を、戸谷洋志『ハイデガー『存在と時間』』(NHK出版、2022年)として発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究は、当初の予定とは異なる順序ではあるが、ヨナスの歴史思想の全体像の解明に向けて、順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、『グノーシスと古代末期の精神』におけるハイデガーからの影響を明らかにし、そこでヨナスがハイデガーの歴史思想からどのような影響を受けているのか、またハイデガーとは異なる出自をもつヨナスの歴史思想はいったいどの点にあるのかを検討する。それによって、ヨナスの歴史思想に対するハイデガーからの影響の全体像を明らかにする。また、『哲学的探究と形而上学的推測』において論じられるヨナスの歴史思想について、その草稿に対するハンナ・アーレントからの書簡を参照し、後期のヨナスが立脚していた歴史思想の全体像と形成過程を明らかにしていく。
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Causes of Carryover |
今年度は、新型コロナウィルス感染拡大の影響から、予定されていた出張を行うことができなかった。次年度以降、国際学会への参加を含め、当初の計画に即して出張を行い、助成金を使用する。
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