2021 Fiscal Year Research-status Report
中国紹興方言における結果持続・進行・完結表現の包括的研究
Project/Area Number |
21K13010
|
Research Institution | Kansai Gaidai University |
Principal Investigator |
宋 天鴻 関西外国語大学, 英語国際学部, 助教 (00845480)
|
Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | 紹興方言 / アスペクト |
Outline of Annual Research Achievements |
中国紹興方言において、所在を表す「来」または定位動詞に「ダ(帯)/ドン(口に冬)/ハン(亨)」がつく形で人や物(以下存在対象と呼ぶ)の存在を表す。従来の研究では、主に話し手と存在対象との距離関係、または話し手、聞き手、存在対象の三者間の距離関係から「ダ」「ドン」「ハン」の使い分けを考察されてきたが、距離説だけでは説明しきれない「ダ」「ドン」「ハン」の実例も見受けられる。本研究では、「可触領域」(話し手/聞き手が随時アクセスできる領域)という新たな基準において、距離説では説明しにくい「ダ」「ドン」「ハン」の使い分けを中心に分析し、結論を次のようにまとめた。 「ダ」、「ドン」、「ハン」はそれぞれ存在対象が「話し手の可触領域内」、「聞き手の可触領域内」、「話し手と聞き手の可触領域外」に位置する場合に用いられる。「可触領域」を決定づける要素として、先行研究で挙げられた「話し手、聞き手、存在対象の三者間の距離関係」以外に、「話し手の視点の転換」、「五感によってアクセスできる領域」などもある。具体的には、話し手が聞き手に存在対象へのアクセスを促す場合に用いられる「ドン」は、話し手が聞き手の視点に立って聞き手の注意を聞き手の可触領域に位置する存在対象へ向けさせる用法であり、間主観性に関わる使い方だと考えられる。そして、従来特例と扱われた可視的な存在対象を表す「ダ」は、「話し手の視線の可触領域」に位置する存在対象を表す用法にまとめられる。さらに、過去を表す場合は、「ダ」は聞き手と存在対象の距離関係を考慮する必要がない用法もある。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2021年度はデータを収集し、「ダ」「ドン」「ハン」の使い分けに関して考察した。研究成果の一部は日本中国語学会第71回全国大会で口頭発表した。現在、口頭発表の内容に基づいて論文を執筆しているところである。
|
Strategy for Future Research Activity |
2022年度は動作の進行を表す「レダ(来帯)/レドン(来[口に冬])/レハン(来亨)」と変化の実現を表す「哉」が共起する形式「レダ/レドン/レハン……哉」、及び結果の持続を表す「ダ」「ドン」「ハン」と変化の実現を表す「哉」が共起する形式「ダ/ドン/ハン哉」の意味機能について考察を行う。具体的な計画は次のようである。(1)分析用のデータを収集する;(2)普通話(Mandarin Chinese)の「在……了」や「着了」と比較しながら、紹興方言の「レダ/レドン/レハン……哉」や「ダ/ドン/ハン哉」の意味機能を考察する。(3)研究成果を論文にまとめて学術誌に投稿する。
|
Causes of Carryover |
まず、当初購入予定の一部の物品の購入を見送りした。また、コロナ禍の影響で研究出張などが難しくなり、旅費などの支出がほとんどなかった。そして、現地調査には行けず、被験者への謝礼が国際送金になるため、煩雑な手続きの関係で謝礼が支払いできていない状況である。以上の理由で、次年度使用額が生じたのである。2022年度の助成金使用計画は次のようである。(1)必要に応じて物品を購入する。(2)コロナの感染状況が緩和されたら学会・研究出張の旅費に使う。(3)2022年度の方言調査が終わった後でまとめて被験者に謝礼を支払う。
|