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2021 Fiscal Year Research-status Report

全文電子データを用いた、キリシタン版に見る日本語語彙の階層性の研究

Research Project

Project/Area Number 21K13017
Research InstitutionSophia University

Principal Investigator

中野 遥  上智大学, グローバル教育センター, 助教 (60870441)

Project Period (FY) 2021-04-01 – 2026-03-31
Keywordsキリシタン語学 / 宣教に伴う言語学 / 日葡辞書 / 言葉の和らげ / 落葉集 / 中世語彙 / 資料論
Outline of Annual Research Achievements

本研究は、キリシタン版『日葡辞書』(1603、長崎刊)をはじめとしたキリシタン版語学辞書や、修徳書類に付されている語彙集である「言葉の和らげ」中の記述から、キリシタン語学に於ける「説明を必要とする日本語(難語)」と「説明に用いられる日本語(易語)」という、日本語語彙の階層性に着目し、キリシタン語学に於ける日本語理解の実態を明らかにしようとするものである。
初年度は、当初の計画通り、次年度以降用いる電子データの入力・整備と、扱う資料についての調査・研究を中心に行った。本研究はキリシタン版の全文電子データの作成と運用により、客観的且つ統計的に日本語語彙の調査を行うものであり、そのためには電子データの作成と整備は必須の作業となる。キリシタン版の中にはローマ字活字のみで印刷されている資料も多くあり、日本語語彙の表記同定作業も必要となる。初年度は、キリシタン版語学辞書と「言葉の和らげ」類については表記同定作業まで完了したものの、修徳書類の中には未完のものもあるため、次年度も引き続き作業を行う。また、初年度はキリシタン版の他、日本語資料についても節用集類などについても、データ化を進めた。これらの日本語資料関係のデータは、主に3年度に活用する予定であり、次年度も引き続き、入力資料の拡充・データの充実を目指す。
これらのデータ作業を踏まえ、初年度は、査読論文1本、書籍原稿1本、口頭発表3本の成果をまとめた。初年度の調査・考察から、キリシタン版の中の資料の性格による語彙の位相の違い(国字本かローマ字本か、語学辞書であるか修徳書であるか、日本由来の資料であるかヨーロッパ由来の資料であるか、など)についても、より注力して検討していく必要があると考えている。次年度以降、「難語」「易語」という階層性の観点だけではなく、「資料の性格による語彙の位相」という点についても意識しながら、研究を進めていく。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

初年度では、次年度以降の調査・研究で用いるための資料の全文データ化と、ローマ表記資料の日本語語彙の同定作業の完了と、日本語資料の電子データ化への着手を目標としていた。具体的な資料としては、キリシタン版であれば、キリシタン語学辞書類、「言葉の和らげ」類、その他のキリシタン版、そして、日本語資料であれば、中世辞書類や中世芸能資料、五山文学、抄物資料などが挙げられる。
この内、キリシタン語学辞書類(日葡辞書、落葉集、羅葡日対訳辞書)、「言葉の和らげ」類の電子データ化と表記の同定作業は完了し、実際にそのデータを用いた論文の執筆や発表も行ってきた。語学辞書以外のキリシタン版については、電子データ化と日本語語彙表記の同定作業を進めており、日本側の資料としても、節用集類、下学集の電子データ化を進めている。但し、キリシタン版全ての日本語語彙同定作業には予定以上の時間が必要となったため、未だ途中であり、2年度も引き続き作業を進めていく事になる。
こうしたデータ整備の中で新たな問題や視点が見出される事も少なくない。当初、次年度に計画していた調査だけではなく、こうした実際の作業・調査の中で新たに得た問題・観点も活かしながら、引き続き研究を進めていく予定である。

Strategy for Future Research Activity

次年度は、当初の予定通り、初年度で整備したデータを活用した、キリシタン版内での語彙の対照調査を進めていく。キリシタン版全ての語彙の同定が完了してはいないが、キリシタン版語学辞書類については既に対照調査にも着手しており、次年度も引き続き行う。特に、「見出し語となっている語」と「見出し語の説明に用いられている語」の実態、及び、それらの語の関係(難語と易語の関係)に着目し、研究を進める。初年度に完遂出来なかった語学辞書以外のキリシタン版の日本語語彙同定作業は、次年度も引き続き行っていく。
初年度の調査を踏まえ、キリシタン版語学辞書の中で見出し語に立てられている日本語のうち、キリシタン版本文の中で用いられている日本語と、用いられていない日本語という語彙の位相の違いも、今後の本研究課題の検討すべき点のひとつであると、現在捉えている。今後は、「キリシタン版語学辞書に立項される語」と、「実際のキリシタン版の中で用いられる語」の関係についても分析を行いたい。具体的には、語学辞書の中で見出し語に立項されている語がキリシタン版本文の中でどれだけ使用されているのか、どのような語が使用され、また、使用されていないのかを、全文電子データを用いて調査する。
キリシタン版に於ける「説明を必要とする日本語」と「説明に用いられる日本語」という観点だけではなく、キリシタン版の中の資料の種類に依拠する使用日本語語彙の違いという観点も取り入れながら、キリシタン版に於ける日本語語彙の階層性についての研究を進めていく。

  • Research Products

    (5 results)

All 2022 2021

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (3 results) Book (1 results)

  • [Journal Article] キリシタン版『サントスの御作業』の「言葉の和らげ」の編纂背景について ―巻1・巻2間の偏りに注目して―2022

    • Author(s)
      中野遙
    • Journal Title

      『論究日本近代語』

      Volume: 2 Pages: 1-14

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] キリシタン版『日葡辞書』のBup.(仏法語注記)について2022

    • Author(s)
      中野遙
    • Organizer
      第15回キリシタン語学研究会
  • [Presentation] キリシタン版『サントスの御作業の内抜書』「言葉の和らげ」掲載語彙と本篇中の分布について2021

    • Author(s)
      中野遙
    • Organizer
      第125回国語語彙史研究会
  • [Presentation] キリシタン版『落葉集』「本篇」の掲出熟語について―キリシタン版『日葡辞書』との対照を中心に―2021

    • Author(s)
      中野遙
    • Organizer
      第14回キリシタン語学研究会
  • [Book] キリシタン語学入門2022

    • Author(s)
      岸本恵実、白井純、岩澤克、岡美穂子、折井善果、川口敦子、黒川茉莉、千葉軒士、豊島正之、中野遙、平岡隆二、丸山徹、山田昇平
    • Total Pages
      168
    • Publisher
      八木書店出版部
    • ISBN
      9784840622455

URL: 

Published: 2022-12-28  

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