2023 Fiscal Year Annual Research Report
包括的な音韻現象分析に基づく統語構造から音韻表示への写像の解明
Project/Area Number |
21K13026
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Research Institution | Hirosaki Gakuin University |
Principal Investigator |
齋藤 章吾 弘前学院大学, 文学部, 講師 (40883674)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 省略 / 統語的同一性 / 線形化 / 外在化 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、統語構造を音韻部門へ送る排出という過程について明らかにすることである。前年度までは複数の音韻現象を包括的に説明する写像プロセスの提案を行った。研究最終年度は、前年度までに提案した写像理論の帰結を探求すると共に、Chomsky (2023)の最新の提案を取り入れたさらなる考察を行うことで、生成文法研究への貢献を試みた。 まず、統語部門における省略適用を示唆した前年度の研究に基づき、統語部門での省略の認可に必要となる統語的同一性の研究を行った。具体的には、(i)省略箇所の形態統語素性は先行詞の形態統語素性の部分集合でなければならず、かつ、(ii)省略箇所は先行詞と同じラベルの構造を持たなければならない、という同一性条件を提案した。本研究では、先行研究で統語的同一性の問題として取り扱われていた先行節-省略節間の統語構造の不一致に対し、その不一致の分布を原理だった方法で説明する条件を提案することで、統語部門における省略適用を伴うシステムの妥当性を高めることを試みた。この研究成果は、日本英文学会第95回大会で発表されている。 他には、Chomsky (2023)が提案した革新的な写像システムに基づき、写像プロセス(特に線形化)に対するさらなる考察を行った。具体的には、最も計算効率の良い線形化として「統語的2項関係を入力にとり、その関係性を有する要素どうしを線形順序上で隣接させる」という写像プロセスを提案し、このプロセスがAバー移動、A移動、主要部移動の線形化を統一的に説明することを示した。本研究は外在化の本質的原理の解明を目指したものであり、本研究が成功している限りにおいて、線形化以外の音韻的現象の写像に対しても同様の原理(計算効率の良い外在化)が何らかの形で機能する可能性があることを示唆するものである。この研究成果は日本英文学会東北支部第78回大会で発表されている。
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