2021 Fiscal Year Research-status Report
Study of the Muromachi Shogunate Organization and the bureaucracy during the Northern and Southern Dynasties
Project/Area Number |
21K13106
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
河原 誠 (田中誠) 立命館大学, 文学部, 授業担当講師 (20791437)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 奉行人 / 文書管理 / 清元定 / 史料論 / 文庫 / 記録 |
Outline of Annual Research Achievements |
2021年度は、順調に研究を進めることができた。 まず「室町幕府の文書管理―南北朝期~室町初期を中心に―」(『アーカイブズ学研究』36号、2022年6月、査読有り)が掲載決定に至った。本稿はこれまでほとんど研究がなかった当該期の室町幕府における文書管理の実態と鎌倉幕府からの連続・断続面を検討したもので、室町幕府奉行人が文書管理に果たした役割を評価したものである。鎌倉幕府後期には文書を集中管理する文庫が存在した。初期室町幕府の直義執政期ではそれを継承し問注所が文庫を管理する体制であった。そこでは直義が発給する裁許下知状の正本にあたる評定事書が保管され、越訴などに用いられた。しかし、観応擾乱期にその体制が崩壊するに至った。その後訴訟制度の変化および将軍発給文書の書札様化が進み、文書を実際作成する奉行人の下で文書控えを作成・保管する体制が成立したことを解明した。また奉行人は当初より裁判記録を作成しており、観応擾乱以降はそれが評定事書に代わり公的な裁判記録となったことを解明した。 また「史料紹介 国立公文書館内閣文庫所蔵室町幕府奉行人清元定筆『御元服聞書』」(『古文書研究』掲載号未定、査読有り)も掲載決定に至っている。こちらは10代将軍足利義澄の元服記であるが、儀礼の詳細だけでなく、準備段階からの幕府内部の動向を知らせる記録である。奉行人が作成した記録としてはまとまった量を持つ。清元定はこうした記録や書籍をいくつも残した奉行人として知られているが、本史料の検討過程で文明年間の足利義尚元服記や日記をつけていたことも明らかにした。室町幕府奉行人が応仁の乱後、何を目指して書籍や記録を作成していたのか、それを明らかにする手掛かりとなる意義を持つ。 さらに久水俊和・木下昌規編『足利将軍辞典』において「裁判」「文書」「学問」「近習」「大名・守護との関係」を執筆し、成果を広く一般に還元することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね計画通りに進んでいるほか、史料紹介も加えることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は、上記の外、前田育徳会尊経閣文庫および京都市歴史資料館にて史料調査を行うことができた。 前者では、清元定が書写したと推定される「斎藤基恒日記」原本を閲覧することができた。調査を継続し、校訂本文や紙背文書などもふくめ成果を出していきたい。 また後者では、奉行人清氏の同族博士清原家が関与した御成敗式目の写本を見出すことができた。 本来の奉行人の氏族構成・昇進制度などの研究も進めつつ、これら史料の検討も進めていきたい。
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Research Products
(3 results)
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[Book] 足利将軍事典2022
Author(s)
木下昌規、久水俊和編(田中誠)
Total Pages
340
Publisher
戎光祥出版
ISBN
9784864034104