2021 Fiscal Year Research-status Report
ポストコロニアル国制下におけるインドの移動民に関する人類学的研究
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21K13178
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Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
中野 歩美 関西学院大学, 先端社会研究所, 研究員 (90827958)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ノマド / 移動民 / ポストコロニアル / サバルタン / 行政区分 / カースト / 統治性 / 官僚制 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の中核となる研究活動として、インドの移動コミュニティに対する英国植民地期の政府の政策を検討するための行政資料調査を大英図書館(The British Library)の東洋及び旧インド省コレクション部門において実施する計画を立てていた。しかし、新型コロナウイルス感染症の感染拡大により、本年度中に当該調査を遂行することはできなかった。そのため、今回予定していた調査は翌年以降に延期とし、代わりにインド国営デジタル図書館(National Digital Library of India)や学術団体が運営するオンラインアーカイブスで公開されている1891年、1901年、1911年の英領インドの帝国国勢調査報告書(全国版)をもとに、移動(民)に関するキーワードのテキスト分析をおこなった。その結果、人びとの移動や移動する人びとに関する記述は、インド亜大陸の人種の分布や流入に関する記述と、言語に関する記述(なかでも、ヨーロッパに暮らすロマの言語との結びつきについての考察部分)とに集中的に見られることが分かった。また、インドの移動コミュニティの人びととは、オンラインのチャットアプリや通話アプリを使って連絡を取り続けており、それらを使って聞き取りをおこなったり、本研究に関連する写真や動画を送付してもらったりなど、国内でも可能な代替措置を用いてデータ収集に努めた。そこで得られたデータをこれまでの調査で得られた知見と突き合わせながら、論文の執筆や学会発表といった成果のアウトプットにも従事した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症の感染拡大状況により、2021年夏に予定していた英国での調査を実施することができなかった。一方で、そうした状況になる可能性は計画時点でも予測されたため、代替的な方法を用いてテキスト分析や聞き取り調査を実施したり、成果のアウトプットをおこなった。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に予定していた英国での調査は、現時点では次年度に延期する予定であるが、新型コロナウイルス感染症の拡大状況を勘案しつつ最終的に決定する。英国での調査内容は当初の計画通り、大英図書館での帝国国勢調査報告書以外のさまざまな行政資料をおこなう予定である。本来であれば、2022年度はインドの国立公文書館において英国と同様の資料収集調査と、現地の移動コミュニティについての実地調査をおこなう予定であったが、夏と冬にそれぞれの調査を分けて実施する、英国(またはインド)での調査期間を短縮して集約的に調査を実施するなど、柔軟な対応策を講じながら、基本的には当初の研究計画に沿って研究を進めていく。また、デジタル資料を使ったテキスト分析についても、今後は、分析対象のキーワードをクリミナル・トライブ法に関連する語彙にも広げながら、残りの1921年、1931年、1941年の報告書についても同様に分析を進めていく予定である。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルスの変異株の感染拡大により、2021年夏に予定していた英国での調査を当該年度中に実施できなかったため未使用額が生じた。当該助成金は、2022年度に延期となった英国での資料調査の出張費として充当する。翌年度分として請求した助成金については、当初の計画通り、主としてインドでの調査とそこで用いるカメラ等の機材の購入に充てる予定である。
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