2022 Fiscal Year Research-status Report
子に対する措置とその可罰性についての分野横断的分析
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21K13204
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 拓海 京都大学, 法学研究科, 特定助教 (90883827)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 刑法 / 違法性 / 親権 / 正当行為 / 懲戒権 / 体罰 |
Outline of Annual Research Achievements |
第一に、教師の懲戒権について、教育法学における従来の見解について整理した上で、民法学上(特に契約法上)、教師の児童生徒に対する権限はどのように基礎付けられるものとされているのかについて調査した。教育法学上の議論で前提とするところの委任契約と、民法学上の議論における委任契約に関する議論に齟齬等があるようにみえるなど、前提としての議論の整理についての課題に直面した。これらの議論を前提に、その議論が刑法上もつ意義について検討を進めている。 第二に、子に対する親の有形力の行使についての最近の裁判例を分析することで、裁判所が子に対する有形力の行使について厳格な態度で臨んでいるように理解できることを確認した。特に、軽微な有形力の行使について、裁判所は暴行罪の構成要件該当性を(ほとんど理由を述べることなく)簡潔に認めた上で、違法阻却事由について判断する傾向がみられた(さらに、最近の裁判例として確認できる範囲ではすべて違法阻却が否定されている)。そのため、違法阻却判断の際の考慮要素の分析・検討が重要であることが再確認できたが、一方で、軽微な行為については可罰的違法性を否定することで構成要件該当性を否定するという方針・見解が、下級審実務の傾向と乖離しつつあるということが判明した。また、裁判例の分析を通して、可罰的違法性を否定して処罰を否定することの根拠について検討すべきであるという課題が発見された。 以上のように、本年度の研究は困難に直面するものではあったが、研究の基盤を固めるものとして次年度以降の研究につながるものであったといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第一に、教師の懲戒権規定についての執筆について、民法上の論点についての先行研究の読解に当初の予定よりも時間がかかり、思ったように執筆が進まず、刊行するに至らなかった。 第二に、令和5年度から所属研究期間を変更することとなったため、その準備等のために、研究課題にかける時間が減ってしまった。 第三に、予定していた国外での研究を実施できなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、主に、違法阻却判断に際して考慮事項となるものについて、児童虐待や精神医療分野等の他分野の知見をも参照しつつ研究を行う。また、その前提として、今年度に直面した課題について検討する。 特に、子に対する措置が子にどのような影響を及ぼすのか(外見上明らかな身体傷害のほか、脳の萎縮や、子供の心を傷つける等)、また、それは刑法学上どのように評価されるのか(身体、財産権や人格権の侵害等)については、昨年度に引き続き検討・分析する。 また、懲戒権・親権規定についての民法改正が実施され、施行されることとなり、この改正を意識したと思われる裁判例も散見されるところ、ここまで遂行してきた本研究についても、情勢の推移に応じた再検討を行う予定である。
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Causes of Carryover |
所属研究機関の変更が予定されていたため、移管等の手続き等の問題がありうることも考え、高額の物品を購入することを控えていた。 また、当初予定していた国外での研究が行えなかったため、その分の旅費の支出がなかった。 購入を見送った物品については、適切な時期に購入する予定である。
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Research Products
(2 results)