2021 Fiscal Year Research-status Report
若年移民の在留資格の移行と定住化:日本人コミュニティの機能に注目して
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21K13455
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
松谷 実のり 追手門学院大学, 社会学部, 准教授 (50802584)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 定住化 / エスニックコミュニティ / 海外在留邦人 / 若者 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ドイツに在住する日本の若者を対象として、定住へ向けた移住プロセスを、日本人コミュニティの互助機能との関係から探るものである。移住プロセスとは移住の決断から定住までの一連の流れを意味するが、ワーキングホリデー、留学、現地採用、国際結婚等に伴う滞在カテゴリの中には、期間の限定があるものが含まれる。滞在カテゴリの選択がどのような条件を受けてなされるか、また滞在の長期化に向けてカテゴリ間の移行がいかに生じるかを明らかにするには、移住関連政策や入国管理行政のようなホスト国の制度的条件だけでなく、移民が利用できる資源についても検討する必要がある。その一つがエスニックな資源である。長期滞在を望む若者がエスニックなネットワークとどのように繋がり、エスニックな資源をどのように調達し、利用するかを明らかにする。 具体的な研究方法としては、日系企業が集中し、日本人在住者の多いデュッセルドルフにおいて現地調査を実施する。現地在住の日本の若者へのインタビューや関連機関・団体への聞き取り、インフォーマルなネットワークの参与観察を行う予定であった。 本年度は、COVID-19の感染拡大による海外渡航制限を受け、海外での現地調査を実施できなかったため、オンラインによる情報収集の可能性を探りながら、予備的に収集したデータの分析に注力した。特に、ワーキングホリデーと現地採用という近接する2つのカテゴリに注目して分析したところ、以下が判明した。ワーキングホリデーから現地採用への移行は制度的には可能だが、必要とされるスキルや就労経験等の違いから、人材紹介会社は難易度が高いとしている。ワーキングホリデーの利用者は、滞在期間中に人材紹介会社を利用するだけでなく、現地の日本人との関係を強化することによって、滞在の長期化に向けた可能性を探っていた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
COVID-19の感染拡大の影響により海外調査の実施が不可能となったことから、オンラインによる情報収集の継続と、これまでに予備的に収集したデータの分析に専念する形へと方法を変更したため、予定より進捗が遅れた。 デュッセルドルフでの予備調査において収集したデータを分析する中で、ワーキングホリデー利用者と現地採用者が、日本企業や日本人コミュニティに必要な労働力を、異なるカテゴリに属しつつ連続性をもって提供していることが明らかになった。移住した若者は滞在延長への資源として日本人ネットワークを活用しようとするが、その理由や方法を彼らの日本人コミュニティ内における役割や立場との関わりにおいて分析する必要があることがわかった。
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Strategy for Future Research Activity |
海外渡航が可能な時期を見計らい、現地調査を開始する。COVID-19感染拡大が滞在継続の意志に与えた影響や、生じた滞在ないし滞在延長の困難等についても、追加の調査項目として検討する予定にしている。具体的には、人材紹介会社をはじめとする関連機関ならびに団体への聞き取り調査とインフォーマルなネットワークの参与観察、現地に在住する日本の若者へのインタビューを行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大を受けた海外渡航制限により、海外での現地調査を延期することとなったため。使用額の差額は、次年度における調査実施やデータ分析のための費用として使用する。
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