2021 Fiscal Year Research-status Report
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21K13499
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
酒井 仁美 徳島大学, 技術支援部常三島技術部門, 技術専門職員 (30281166)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | コムギ / 大腸菌 / 食中毒 / 予防 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸菌の調理器具素材への付着は、素材の違いや菌種により違いがあり、そこに食品成分が存在すると、その成分により大腸菌の付着を促進または抑制することが知られている。家庭で日常的に使用されるガラスやステンレス素材への大腸菌の付着性に対し、主食として食しているコメ及びコムギ由来成分の影響について調べたところ、コムギ由来成分はガラスやステンレス素材への大腸菌の付着を抑制することを見出した。 このコムギ由来成分は食用の穀類由来であり、体内に摂取されても安全である。また、水溶性であり液体への添加が容易であること、1分間という短時間の処理でも活性成分が素材に付着し効果を発揮することから、噴霧や塗布など簡便な使用法で利用可能であると思われる。本研究課題では、これらの特性を活かした、原因菌を「つけない」ことを目的とした食中毒予防を確立し、食品産業だけでなく玩具や医薬品などあらゆる分野、保育園や学校、高齢者施設などでも利用できるような安全な食中毒予防薬の開発を目的としている。 2021年度は、調理器具をはじめ日常生活でよく利用されているアルミニウムや鉄などの金属類、ポリプロピレンやABS樹脂などのプラスチック類、ガラス、紙、布などの素材に対するコムギ由来成分の大腸菌付着抑制効果について調べた。実験の結果、もともと大腸菌が付着する素材と付着しない素材があったが、大腸菌が付着する素材に対してコムギ由来成分で前処理を行うと、大腸菌の付着を抑制することがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
調理器具をはじめ、日常生活において使用されている主な非生物素材素材(金属8種類、プラスチック11種類、ガラス2種類、木材1種類,繊維9種類)31種に対する大腸菌の付着性について調べた。今回調べた素材のうち、大腸菌の付着する素材について、金属類とプラスチック類ではコムギ由来成分で前処理すると大腸菌の付着を抑制し、ステンレスおよびガラス以外の身の回りの素材に対してもコムギ由来成分の有効性が確認できた。 また、同じポリプロピレン素材でも、板状ではもともと大腸菌は付着しないが、繊維状(不織布)になると菌がたくさん付着するといった,同じ素材でも形状が異なると付着性が異なるという結果が得られた。未使用の状態では大腸菌が付着しない素材でも、長年使用して素材表面にたくさん傷がつき表面の状態が異なってくると、菌が付着しやすくなる可能性を示唆する知見も得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
金属類、プラスチック類のうち、大腸菌の付着する素材に対してコムギ由来成分が菌の付着を抑制することが明らかとなったので、今後は、コムギ由来成分の持続性について、成分を素材に付加させてからの保管期間と保管中の温度による効果の変化や、コムギ由来成分の素材への付加方法について調べることにより、安心・安全な食中毒予防への応用に向けた検討を行う。
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Causes of Carryover |
理由:本年度の研究に必要な素材、チューブやシャーレなどの実験器具が予定より少額で賄えたため、次年度使用額が生じた。 使用計画:次年度は、本年度の研究結果より、何度も使用した後の素材に対する菌の付着性と、それに対する小麦粉由来アラビノキシランの菌付着抑制効果について検討する必要性が生じ、素材と実験器具が多く必要になると予想されるため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する計画である。
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