2022 Fiscal Year Research-status Report
負の正則断面曲率をもつ複素多様体の代数幾何学的構造の研究
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21K13784
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野村 亮介 東京大学, 大学院数理科学研究科, 特任助教 (40858643)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 正則断面曲率 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、前年度に引き続き、コンパクトケーラー多様体において、ケーラー・リッチ流の研究を主に行った。その中でも特に、正則断面曲率がゼロ以下の場合を中心に研究を行なった。ウー・ヤウや、トサッティ・ヤングらの結果によって、正則断面曲率がゼロ以下であるコンパクトケーラー多様体はその標準束が数値的半正であることが知られている。したがって、ケーラー・リッチ流とよばれる非線形偏微分方程式に從って時間発展するケーラー計量は、任意の正の時刻において存在することがわかる。そこで、このような多様体が、この時間発展するケーラー計量に従って時刻が無限大に近づく極限においてどのように変化していくかを調べた。
この時間発展においては、多様体は平坦な方向に潰れていくように時間発展していくことが期待されている。そのため、このような問題において、ケーラー計量に関する直径評価が基本的であり、その中でも、多様体が潰れて退化する方向について直径を評価することが重要である。そのためにグオ・フォン・ソンによって導入されたエントロピーに着目した。彼らの手法では、エントロピーを用いてグリーン関数を評価することが重要な鍵となる。そこで、正則断面曲率がゼロ以下の多様体について、正則断面曲率を用いてエントロピーに関するより良い評価を得られないか模索した。そしてこれを通じて、ケーラー・リッチ流に従ってこのような多様体が潰れていく様子を考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ケーラー・リッチ流と直径評価に関する理解が深まりつつあり、おおむね順調に進展している.
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、エントロピーに注目することで精密な直径評価が得られないか研究する。それとともに、構造定理に関わるような葉層構造の研究も行っていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍のため思うように出張ができなかったため差額が生じてしまった。次年度は幾分か状況が好転していると期待されるので、出張を積極的に行い、他の研究者と議論を深めることを予定している。
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