2021 Fiscal Year Research-status Report
Theoretical study of cluster structure of light nuclei based on realistic nuclear force
Project/Area Number |
21K13919
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Research Institution | Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
福井 徳朗 国立研究開発法人理化学研究所, 仁科加速器科学研究センター, 基礎科学特別研究員 (40757118)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | クラスター構造 / 核力 / カイラル有効場理論 |
Outline of Annual Research Achievements |
4He原子核であるアルファ粒子は、原子核の構成粒子として振る舞うことがあり、そのような原子核の状態をアルファクラスター構造と呼ぶ。アルファクラスター状態における大きな課題の一つが、クラスター状態が核力(2核子間および多核子間に働く相互作用)の観点から十分に理解されていない点である。 本研究では、4He + 4Heというクラスター構造を仮定した微視的模型により、8Beの基底状態および励起状態において核力がどのように寄与しているのかを分析した。具体的には、核力をパイ中間子を交換する回数で分類し、クラスター状態における引力源は何なのかという点に注目した。 この動機に基づき、カイラル有効場理論によって導いた核力を採用した。カイラル有効場理論は量子色力学に依拠した理論であり、核子とパイ中間子を自由度として、核力をパイ中間子の回数によって分類することができる。 計算の結果、2体核力のうち、パイ中間子を2個交換する過程がクラスター状態における主な引力源であることを明らかにした。これは過去の研究での予想を支持する結果である。一方で、パイ中間子を交換しない過程(接触相互作用として記述)も無視できない引力をもたらすことを明らかにした。これは本研究で初めて明らかになった事実である。 本研究の成果はJ. Phys. G 49, 055102 (2022) [https://doi.org/10.1088/1361-6471/ac58b3]に論文として出版された他、様々な研究会で報告された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究実績の概要に示したように、クラスター構造に関する重要な成果を得ることができた。また、研究成果を発表した論文では、微視的クラスター模型でカイラル有効場理論の核力を扱う方法を定式化した。この定式化は微視的クラスター模型のみならず、同じ基底を用いる一般の核多体理論に適用でき、今後の研究で役立つ。
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Strategy for Future Research Activity |
現在は単純なアルファクラスター構造を仮定した模型を採用している。具体的には、4Heはスピンとアイソスピンの両方がゼロである配位(スピンアイソスピン飽和)のみで構成されるとしている。この仮定の下では核力のうち非中心力が作用しない。しかし、非中心力が非常に重要な寄与をもたらすことは原子核の様々な性質から明らかになっている。したがって、カイラル有効場理論で導出される非中心力がクラスター構造にどのように寄与するのかを明らかにするために、スピンアイソスピン飽和を仮定しない計算を実行する。
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Causes of Carryover |
新型コロナウィルスの感染拡大により、国内外への出張が制限されたため、旅費の支出がなかったことが次年度使用額が生じた主な理由である。次年度は国内出張が増えることが予想され、旅費の支出も増加することが見込まれる。また論文のOpen Access Feeや消耗品、さらにはソフトウェアのライセンス料などに予算を使用する計画である。
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Research Products
(7 results)