2021 Fiscal Year Research-status Report
衛星レーダによる溶岩流3次元動態観測と溶岩流量推定手法の開発
Project/Area Number |
21K14000
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
姫松 裕志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山研究推進センター, 特別研究員 (50846376)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合成開口レーダー / 溶岩流 / 有限要素法 / マグマ貫入 / カルデラ / 火山噴火 / 衛星データ / 地殻変動 |
Outline of Annual Research Achievements |
溶岩流は噴火に伴う火山災害のひとつであり,インフラや住居を破壊する.溶岩流の流量推定は火山噴火の規模推定評価の高度化に加えて,被害想定範囲の早期予測につながることが期待される.本研究課題では衛星データを用いた火山噴火に伴う溶岩流の流量を推定する手法の開発を目標として設定している. 初年度は2018年Sierra Negra火山噴火を主な研究対象として衛星SARデータを解析し,溶岩流の空間分布と地殻変動の詳細な描像を明らかにした.衛星SARの解析結果は2018年Sierra Negra火山噴火に伴うカルデラの収縮に加えて,マグマが地殻内部を水平かつ帯状に貫入する地殻変動の描像を明らかにした.噴火に伴う地殻変動の振幅は数メートル程度に及ぶため,画像相互相関法による変位抽出法(ピクセルオフセット法)を採用した.マグマが貫入した領域の地表面では,水平貫入に伴う隆起のみならず,貫入進展方向と一致する方向の水平変位も認められた.ピクセルオフセット法による低相関領域を抽出することによって地表面を流下した溶岩流の定置領域を抽出した.一方,噴火後の経時的な変形の検出にはSAR時系列解析を適用した.既存の数値標高モデルと比較して有意な変化量は認められず,定置後の顕著な収縮は認められなかった.半無限弾性体媒質を仮定した矩形開口に伴う地表変位の解析解を用いて観測データに整合させるようにマグマ貫入の幾何を推定すると,貫入経路全体を通しておおむね貫入の深さが一定であることが示唆された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
衛星データ解析用の計算機の納入が計画よりも遅れたものの,衛星データの解析はおおむね終了した.噴火に伴う諸現象の空間的特徴を明らかにするために高空間分解能の観測モード(stripmap mode)を有するALOS-2/PALSAR-2とCosmoSkyMedのデータを使用し,噴火後の時間発展する地殻変動の検出には定常的かつ高頻度にデータを撮像するSentinel-1のデータを採用した.ALOS-2/PALSAR-2 とCosmoSkyMedデータの一部は観測対象領域の一部が欠損していたが,両者のデータを統合することで噴火に伴う3次元変位成分へ分解した.Sentinel-1データにはSAR時系列解析を適用し,時空間発展する地殻変動の検出と観測特有のエラーの低減を試みた.Sentinel-1データの解析結果はマグマが貫入した直上で経時的な沈降を示唆する衛星視線距離の伸長が認められた.解析結果の精度評価もおおむね終了し,モデリング時にデータとの適合度を評価する際に使用する.第2年度に実施するシミュレーションのための予備解析として,半無限弾性体媒質を仮定した地表変化の解析解を用いたマグマの貫入幾何を推定した.
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は当初の計画通りに衛星データの解析結果をもとに,有限要素法によるシミュレーションを実施する.初年度で実施した衛星データの解析結果について学会で発表し,解釈について議論する. 課題の進行状況によっては,他火山の噴火に伴う溶岩流の定置が引き起こす地殻の変形様式についても調査し,観測事実の蓄積を進める.噴火に伴うマグマの貫入とカルデラの変形が認められた海外の類似の事例を中心に文献調査を実施し,シミュレーションの結果とあわせて衛星データの解釈をすすめる.
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Causes of Carryover |
COVID-19蔓延拡大に伴う海外渡航自粛要請により,海外渡航・国際会議への参加が実現しなかったため次年度使用額が生じた.オンラインによる国際学会への投稿費・参加費と欧文査読誌への投稿に向けた原稿の英文校正に使用する.
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