2022 Fiscal Year Research-status Report
衛星レーダによる溶岩流3次元動態観測と溶岩流量推定手法の開発
Project/Area Number |
21K14000
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
姫松 裕志 国立研究開発法人防災科学技術研究所, 火山研究推進センター, 特別研究員 (50846376)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 合成開口レーダー / 溶岩流 / 有限要素法 / マグマ貫入 / カルデラ / リモートセンシング / 地殻変動 / 火山噴火 |
Outline of Annual Research Achievements |
初年度で実施した衛星SARの解析結果に基づいて,第2年度はSierra Negra火山北麓で生じた溶岩流の動態観測とマグマ貫入に伴う地殻変動を再現するモデルを提案した. 溶岩流の流下領域は画像相互相関法による変位抽出法(ピクセルオフセット法)の低相関領域を抽出することで流下領域を見積もった.溶岩流の高さの情報を得るために噴火後のSentinel-1のデータをSAR時系列解析に適用し,数値標高モデル(DEM)の誤差を推定した.しかし溶岩流の流下領域において有意なDEM誤差を見出すことができなかった.DEM誤差はSARの観測に用いるマイクロ波の波長,センサーと観測地点までの距離,2観測の衛星垂直基線長,マイクロ波入射角に依存するが,Sentinel-1の観測条件を考慮すると概算として10mの誤差があった場合におよそ0.2 radianの位相変化量として現れる.先行研究による現地調査の報告書によると溶岩の層厚の最大は10m程度であり,現段階の解析手法では溶岩流の層厚がDEMの誤差として現れるほどの観測精度を達成できていなかったため,検出に至らなかったと考えられる.観測精度の向上は今後の課題である. マグマ貫入に伴う地殻変動は貫入の幾何を推定するために矩形一様開口面を仮定して幾何と開口量を群知能によるパラメータ最適化手法のひとつであるParticle swarm optimizationによって見積もった.貫入の幾何はカルデラ周辺では地形と同様に北向き傾斜の構造を持ち,山麓へ向かうにつれて傾斜が小さくなり,水平に近づいた. 第2年度には衛星SARの解析結果やマグマ貫入のモデルについて国内・国外学会にて成果を報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
第2年度は衛星SARのデータ解析結果を再現するためのモデルの構築と有限要素法による数値計算により荷重に伴う地殻変動量を見積もる予定だった.上述の通り,地殻変動の描像のみではわからないマグマ貫入の幾何と開口量を見積もることができた.有限要素法による計算については,計算ソフトウェアによるモデルの組み立てに時間を要し,想定していた計算の実装にまで至らなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度で完遂できなかった有限要素法による荷重に伴う地殻変動量の見積もりを進める.衛星SARのデータのみでは溶岩流の層厚を見積もることができなかったため,衛星データによる層厚を見積もる手法について検討する.Sierra Negra火山を対象とした衛星SARの解析結果と地殻変動を再現するモデルはマグマ貫入を伴う火山噴火の事例として欧文査読誌へ投稿する.
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