2022 Fiscal Year Research-status Report
共鳴核反応法と界面敏感分光法による二酸化チタン表面の水素拡散ダイナミクスの解明
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21K14588
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
長塚 直樹 京都大学, 理学研究科, 助教 (00826232)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 表面 / 和周波発生振動分光 / 水分子 / 水素結合 / ステップ / プラチナ |
Outline of Annual Research Achievements |
二酸化チタン表面上に吸着した水素による赤外分光の信号強度は微弱であることが報告されており,そのため先行研究例も少ない.和周波発生振動分光の信号強度は赤外分光の信号強度に比例するため,表面に吸着した水素を測定するためには高い効率で信号を得なければならない.そこで,和周波発生振動分光法の検出効率を向上させるためバランス検出の光学系を新たに構築し,アナターゼ型二酸化チタンと同じ対称性を持つPt(533)とPt(553)を対象として実験を行った. この二つの表面はそれぞれ,(100)と(111)ステップが周期的に配列しており,燃料電池における酸素還元反応の効率がPt単結晶面の中で最大付近を示すことが知られている.典型的な表面欠陥の一種であるステップが反応効率におよぼす影響を調べるために重要な表面であるといえる.先行研究では,Pt(533)のステップにおいて水分子は一次元鎖のジグザグ構造をとると予想されているが,一方でPt(553)では,1次元鎖のL字ワイヤー構造や二本鎖構造が提案されている.表面に吸着した水分子の被覆率を制御し,昇温脱離法とヘテロダイン和周波発生振動分光を行うことにより,ステップが吸着した水分子の水素結合ネットワークに与える影響を調べた. 結果としてPt(533)とPt(553)では,先行研究で予想されていたように,それぞれジグザグ構造やL字ワイヤー構造を仮定したときに予想される和周波発生振動分光のスペクトルが得られたが,一方で理論計算には現れない表面に配向したOHをもつ水分子がステップ上で観測された.また,ステップに吸着した強い水素結合をもつ水分子が表面に形成される水分子ネットワーク全体の水素結合強度を底上げすることを見出した.これらは表面の水分子が関わる反応を微視的に考える上で重要な成果と考えられ,論文として成果を報告した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
和周波発生振動分光の検出効率をバランス検出を採用することで従来の6倍へ向上させることに成功した.その結果として測定が困難であったサブモノレイヤーの水分子についての信号を取得し,燃料電池の電極反応活性にかかわるステップによる水分子の水素結合ネットワークの変調について議論した.また,アナターゼ型二酸化チタン表面と同じC1vの対称性を持つ表面に対する実験に成功しており,レーザーの入射方位と和周波発生振動分光の信号強度の関係も明らかにした.検出の効率化とC1vの対称性を持つ表面における測定の両方について習熟し,二酸化チタン測定の準備が整ったといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
和周波発生振動分光の検出効率の向上に成功したので,今後は二酸化チタンの測定に挑戦する.二酸化チタンは結晶多型であり,ルチル型とアナターゼ型の2種の結晶構造の反応効率が異なり,よく対比されている.そこで,表面として両者の最安定面に注目し研究を行っていく.まずは信号強度の強い水分子の測定を行う予定である.その後に表面吸着水分子の測定に着手する.まずは定常測定の範囲でルチル型とアナターゼ型の比較を行い,その後に時間分解測定に挑戦する予定である.
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Research Products
(5 results)