2022 Fiscal Year Research-status Report
IL-33/ST2を介した川崎病および冠動脈病変発症機序の解明
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21K15906
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岡田 清吾 山口大学, 医学部附属病院, 助教 (50610680)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 川崎病 / alarmin / DAMPs / IL-33 / ST2 / 冠動脈病変 |
Outline of Annual Research Achievements |
川崎病は主に1歳前後の乳幼児に好発する全身性血管炎であり、少子化に関わらず患者数が増加傾向である。長らく原因不明とされてきたが、自然免疫異常による過剰なサイトカイン産生が病態の主体であるという考えが有力視されている(自然免疫説)。川崎病は冠動脈に最も強い炎症が生じ、冠動脈病変(拡大・瘤化)を合併し、若年突然死の原因となる。川崎病の標準治療は長らく免疫グロブリンおよびアスピリン併用療法であったが、近年ステロイド、抗腫瘍壊死因子(TNF)-αモノクローナル抗体製剤(インフリキシマブ)、シクロスポリンなどの抗炎症療法が新たに保険収載された。しかしながら約8%の症例に急性期冠動脈病変を認め、新たな治療法の開発が望まれている。 自然免疫制御機構の一つであるインターロイキン(IL)-33/ST2系が川崎病冠動脈炎の発症および増悪に関与している可能性について、ヒト血清および培養冠動脈細胞を用いて解析したものである(2021-2023年度 科研費若手研究採択課題)。川崎病患者の血清を用いた解析では、可溶性IL-33受容体であるsST2が冠動脈病変合併群において有意に高値であった(冠動脈病変合併群87.2 ng/mL vs. 非合併群31.7 ng/mL、p = 0.017)。in vitro実験では、IL-33刺激はヒト冠動脈内皮細胞(HCAEC)表面の膜型IL-33受容体であるST2Lの発現を増強させた。さらにIL-33刺激濃度依存性にHCAEC培養上清中の炎症性サイトカイン(sST2、IL-6、IL-8、単球走化性因子[MCP]-1)濃度が上昇した。さらに注目すべき結果として、従来川崎病リーディングサイトカインとされてきたTNF-αに比し、IL-33はHCAECにおけるIL-6およびIL-8の産生を有意に増加させることが示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の当初の目標はすでに達成し、成果物として公開されているため。 (Okada S, Yasudo H, Ohnishi Y, Matsuguma C, Fukano R, Motonaga T, Waniishi T, Hasegawa S. Interleukin-33/ST2 Axis as Potential Biomarker and Therapeutic Target in Kawasaki Disease. Inflammation. 2023 Feb;46(1):480-490.)
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Strategy for Future Research Activity |
今後は冠動脈内皮細胞および冠動脈平滑筋細胞の共培養実験を行い、より生体内に近い環境でのIL-33/ST2系の解析を行う。また冠動脈炎モデルマウスを用いた実験系を計画している。
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Causes of Carryover |
実験の進捗状況が当初の予定よりも順調に進行し、初代細胞・培養液・ELISAキット購入等にかかる費用が当初予定していた額を下回ったため次年度使用額が生じた。第3年度は冠動脈細胞プレトリートメント用のモノクローナル抗体(5-10万円/本)、マウス飼育代、マウスおよびヒト組織染色用の抗体(5-10万円/本)、リアルタイムPCRに用いるcDNA合成キット(約5万円/キット)、primer/probe(3-5万円/本)、master mix(約5万円)等の試薬購入を計画している。
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