2021 Fiscal Year Research-status Report
ドライバー遺伝子変異陽性肺癌に抗腫瘍免疫を惹起する新たな癌免疫療法の開発
Project/Area Number |
21K16126
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Research Institution | Hyogo Medical University |
Principal Investigator |
堀尾 大介 兵庫医科大学, 医学部, 助教 (40815635)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ドライバー遺伝子変異・転座陽性肺癌 / 小分子阻害薬 / 免疫チェックポイント分子 / Drug tolerant persisters |
Outline of Annual Research Achievements |
現在の肺癌診療において小分子阻害剤の標的となるドライバー遺伝子変異のうち、特にEGFR遺伝子変異陽性非小細胞肺癌(EGFR mutation positive non-small cell lung cancer: EGFR M+ NSCLC)症例は肺癌の60%を占める肺腺癌の約半数を占め、肺癌全体の治療成績の向上のためにもこれらの症例の予後のさらなる改善は不可欠である。EGFR M+ NSCLCに対するEGFR Tyrosine kinase inhibitor (TKI)の奏功率は80%に達するが、完全寛解に到ることはなく、一部にdrug-tolerant persisters(DTPs)と呼ばれる細胞集団が存在し、やがては必ず再増殖する。しかしながら、これらのDTPsは数的には少数であるため、仮にこれらDTPsに対する有効な抗腫瘍免疫を惹起できるのであれば、「根治」を目指す事も可能と考える。申請者らはまずEGFR M+ NSCLC細胞であるHCC827細胞をEGFR-TKIで刺激し、各種免疫チェックポイント分子(Immune checkpoint molecule: ICM)の発現の変化を調べた所、ほぼ全てのICMの発現が上昇していたが、中でもGalectin-9の発現が高度に上昇していた。申請者らはHCC827細胞をEGFR-TKIで刺激した際、転写共役因子YAP/TAZが核内に移行し得る事を確認しており、これがGalectin-9の発現誘導にも関わっているのではないかと考えている。以上から、EGFR-TKI治療中にYAP/TAZを制御する事がDTPsに対する抗腫瘍免疫の惹起につながり、DTPsの根絶に繋がるのではないかと考え、現在解析を進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度はヒトEGFR M+ NSCLC細胞(HCC827)を用いたin vitroの解析を中心に行った。HCC827細胞をEGFR-TKIで刺激すると、前述のようにYAP/TAZの核内移行が進み、ICMの一つであるGalectin-9の発現が上昇するが、YAP/TAZがGalectin-9の発現誘導に関わっているかを確認するために、CRISPR/Cas9システムを用いてHCC827細胞におけるYAP,TAZ,そのdouble knock out(DKO)細胞の作成を試みた。HCC827細胞のYAP KOやTAZ KO細胞はなんとか樹立できたが、YAP/TAZ DKOについては、クローンが取れず樹立困難であった。この過程で時間をやや費やしてしまったが、HCC827のYAP KO細胞において、EGFR-TKIで刺激した所、Galectin-9の発現が有意に抑えられ、YAP/TAZが確かにICMの発現に関わっている事が示唆され、今後の解析にも期待が持てると結果と考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は、HCC827 YAP/TAZ KO細胞とICMの発現誘導についての更なる解析を行うと共に、in vivoの実験としてマウス肺癌細胞(3LL)にmutantのEGFR遺伝子を導入した細胞をC57/BL6マウスの皮下に移植し、EGFR-TKIで治療実験を行い、腫瘍のGalectin-9の発現や腫瘍浸潤リンパ球を解析する。また、in vitroでYAP/TAZの核移行に関わるCyclin-dependent kinase (CDK) 7の阻害薬がGalectin-9の誘導を阻害する事が確認できれば、CDK inhibitorによるin vivoでの実験も行う。また、肺癌の臨床検体サンプルを集積し、免疫染色でYAP/TAZの局在やGalectin-9の発現を評価する予定で、臨床検体集積のための研究計画書は当院の倫理審査委員会を通過している。
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Causes of Carryover |
(理由) 今年度は試薬の購入などは必要であったものの、in vitroの実験が主で、細胞や消耗品については既に研究室に備蓄されていたものを有効に使用する事ができたため、差額が生じる結果となった。 (使用計画) 次年度は、in vitroの実験だけでなく、動物実験やヒト臨床検体の免疫染色での解析を行うことを想定していて、動物の購入・飼育費、検体の解析に使用する抗体および試薬の使用量が大きく増加すると思われ、差額分を含めた研究費を使用させて頂く予定である。
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