2022 Fiscal Year Research-status Report
Does physical inactivity during growth increase a risk of developing dementia?
Project/Area Number |
21K17550
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
土橋 祥平 筑波大学, 体育系, 助教 (10875264)
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Project Period (FY) |
2021-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 成長期 / 身体不活動 / 狭小ケージ / 高脂肪食 / 物体位置認識試験 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、成長期、特に発達早期の運動不足が将来的な認知機能に悪影響を及ぼす可能性について検討を行い、その対抗策の基盤となる分子メカニズムの解明を目指すものである。 研究初年度において、ラットを床面積が通常の半分程度の狭いケージで飼育することで行動範囲を制限し、運動不足状態を惹き起こす介入を若年期に相当する 4-12週齢に実施し、その後成年期に入る20週齢まで通常飼育を行った。その際、「高脂肪食摂取と運動不足の相互作用」と「運動不足介入時期の違いによる影響」を併せて検討し、げっ歯類の物体探索行動の習性を利用した認知機能試験を行った後に脳組織のサンプリングを行った。 研究2年目は認知機能試験時の行動解析を実施した。その結果,通常飼育群と比較して若年期に運動不足を施した群では,形態や血液性状に変化が観察されなかったのにもかかわらず,認知機能課題成績が悪化することが明らかとなった。活動制限のない飼育環境下で高脂肪食を摂取したラットも認知機能課題成績が悪化したが、運動不足との相互作用により悪化は助長されなかった。また、神経機能の発達が著しい成長期前期 (4-8週齢) での活動制限は成長期後期 (8-12週齢) と比較して認知機能の悪化を招くものと予想していたが、その予想に反して成長期前期での活動制限は認知機能に悪影響をもたらさず、成長期の後期に活動制限を施したラットでは認知機能が悪化することが明らかとなった。したがって、若年期の運動不足による負の影響はその後運動不足が解除されても残存し、成年期以降の認知機能を悪化させてしまう可能性が示唆された。今後は生化学的解析を進め、若年期の運動不足が将来的な認知機能悪化を招くメカニズムの解明を進める予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究初年度において、本研究計画で実施する2種類の飼育介入実験を完遂したので、2年目は飼育介入で実施した認知機能試験の行動解析と生化学的解析を進める予定で計画をしていたが、研究代表者が年度途中に研究機関を異動したため、研究費や飼料の移送、研究環境の整備に時間を要したため、生化学的解析が十分に進められなかった。現在は研究環境の整備が完了したので、生化学的解析を実施しているところであるが、今後の解析の進行状況によっては研究実施期間の延長も含めて検討している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの検討によって若年期の運動不足が将来的な認知機能悪化を招く可能性があること、そして運動不足の時期によってその影響力が異なる可能性が明らかとなった。今後はこの独特な変化をもたらす分子機構の解明に向けて、収集した海馬からRNAを抽出し、遺伝子の網羅解析の実施に加え、認知機能に関連するタンパク質発現を検討し、若年期の運動不足の対抗策の基盤となる分子ターゲットの同定を目指す。
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Causes of Carryover |
当初使用予定であった金額は、実験により収集した検体の生化学的解析に充当する予定であったが、年度途中で研究機関を異動することになり、検体の移送や研究費の移管、研究実施環境の整備に多くの時間を要したため、生化学的解析を十分に進めることができなかったため、次年度使用額が発生した。翌年度は、外部研究機関への遺伝子網羅解析の委託等に加え、研究代表者自身により各種生化学解析を実施する予定である。
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