2012 Fiscal Year Annual Research Report
パプアニューギニアにおけるマラリア薬剤耐性ダイナミズムの集団遺伝学的解明
Project/Area Number |
22406012
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Section | 海外学術 |
Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
美田 敏宏 順天堂大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (80318013)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
田辺 和裄 大阪大学, 微生物病研究所, その他 (40047410)
塚原 高広 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (90328378)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マラリア / 薬剤耐性 |
Research Abstract |
本研究ではパプアニューギニアにおいて熱帯熱マラリア原虫の薬剤耐性ダイナミズムの解明を目指す.本年は年度初めに挙げた6つの研究項目について以下の実績を得ることができた. (1) ウェワク病院における継続的サンプリングによって約80検体の熱帯熱マラリア原虫検体を得ることができた.また本年度から、ダグア地区保健センターでも同様のサンプリングを開始、約100検体を収集した. (2) In vitro薬剤耐性試験は当初予定していたWewakではなくMadang で行った.対象薬剤を当初の3種類から6種類まで増やし、35検体で結果を得た。10年前に比べクロロキン耐性度が上昇したが、他のアジア流行国よりは低かった。しかし予想以上にアルテミシニン感受性が低いことが明らかになった. (3)研究条件の悪い流行地でも、効率的で正確なin vitro薬剤試験結果を得るための手法を確立した。改良したHRP-2およびpLDH法により、現地調査時に経験する様々な障壁(高温、水質など)によらず頑強な結果を出ることが期待される。 (4) 10年前と比べ、2010,2011年にはサルファドキシン耐性を示すdhps遺伝子変異が著明に増加していることが明らかになった.その結果、中立なマイクロサテライトマーカー間で連鎖不平衡が見られるようになっていた.これは薬剤による耐性原虫の選択によって原虫集団の多様性が減少した可能性を示唆している. (5)2012年2月までに東セピック州・ダグア地区村落で行ったマラリア疫学調査で得た1500例の血液検体について、原虫DNAを抽出し、種鑑別PCRを行っている。700例については顕微鏡診断とWHOが推進する迅速診断キット,双方を用いて診断を行っている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
本研究計画の目的は、2010年にマラリア治療第一選択薬がクロロキン+サルファドキシン/ピリメタミンからアルテミシニン併用療法へと転換したPNGにおいて、この変更がどのように地域の薬剤圧を変化させるか、さらにマラリア原虫の薬剤耐性ダイナミズムにどのような影響を与えるかについて解明を目指すものである。これまで3年間の研究により、以下のような業績を得ている。 1. 2001-2004年時と比べ熱帯熱マラリア原虫の分布が著明な地域偏在を示していることを見出した。さらに集団遺伝学的検討から、原虫は一様な集団から、小さな地域集団に分かれている(分集団化)ことを明らかにした。 2. サルファドキシン薬剤圧の上昇により、それまで存在しなかったサルファドキシン耐性原虫が、2010年には多くの村落で急速に増加(50-70%)していることを明らかにした。 3.2の結果が原虫集団の連鎖不平衡を進行させ、結果として集団の多様性が低下しつつあることが明らかになった。これは薬剤による選択によって原虫は集団としての環境適応性を失っていくことを意味している。 以上は当初予定していた研究目標の8割をカバーしている。 一方、現地における治療政策変更(ACT開始)が2年程度遅れて導入されたため、アルテミシニン耐性遺伝子の同定を目指した研究は当初より遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の計画以上に進展しているが、アルテミシニンに関するダイナミズムの解析が遅れている。このため本年度も薬剤耐性試験をおこない、アルテミシニン感受性の変化を捉えていく。東南アジアでは6年前に耐性原虫の出現が確認されており、アフリカでも治療効果が減弱している。パプアニューギニアは薬剤耐性原虫の出現起源地の一つであり、いずれ耐性原虫がde novoに出現する可能性が高いと考える。
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Research Products
(10 results)