2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22650114
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
大須賀 敏明 千葉大学, フロンティアメディカル工学研究開発センター, 准教授 (80223816)
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Keywords | 造血幹細胞 / 骨髄移植 / 肝機能障害 / アレルギー / 細胞保護 / 凍害 / DMSO / N-メチルアセトアミド |
Research Abstract |
細胞を凍結すると氷の結晶が細胞を潰す凍害が生じるため、細胞は凍害保護剤を添加して長期の凍結保存がされている。ジメチル酸化硫黄(DMSO)は、広範な細胞の凍害を防止できるが、毒性は無視されてきた。凍結保存剤は60年前に偶然に発見されたため、DMSOの機能を再検討した。DMSOは硫黄の持つ電子親和性がラジカル除去剤になるとともに副作用も生じ、酸素を切り離しやすいことが毒性の原因になると推定した。ふたつのメチル基がペプチド結合を挟む構造を持つN-メチルアセトアミド(NMA)は、DMSOに類似した分子構造である。NMAは水中ではペプチド結合で会合し、DMSOも水中で会合するため、DMSOに似た分子構造と性質を持つNMAを、DMSOに替わる凍害保護剤として、本研究では提案している。DMSOまたはNMAを添加した生理食塩水に、白血球を入れて3時間観察すると、NMAはDMSOより高い生存率が得られる。NMAは造血幹細胞の良好な凍害保護剤となることが判明してきた。NMAがメチル化したジメチルアセトアミド(DMA)に、弱い発癌性を指摘する研究があり、凍結保存剤は治療と同時に体内に入るため、NMAが体内で有害な代謝物を作らないことを立証する必要がある。ラットにNMAを注射して尾から蒸散するガスと、尾の表面に分泌する体液を、質量分析ガスクロマトグラフィーと微量分析赤外分光装置で分析して、ラット体内ではNMAはDMAを作らず、またDMAもNMAを作らないことが判明した。細胞保護剤として凍結保存剤に添加されているアルブミンの危険性も指摘されているため、安全な細胞保護剤としてトレハロース、ヘキサエチルスターチ(HES)、デキストランをNMAに添加して凍結保存を行い、家畜精子にはトレハロースが有効で、ヒト造血幹細胞にはHESが有効な凍結保存剤となることが判明した。アルブミンを使用しなくてもNMAが有効な凍害保護剤となるための細胞保護剤の選択が重要な課題となった。
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