2023 Fiscal Year Annual Research Report
Precise Design of Covalent One-Dimensional Nanotubes with Well-defined Structures
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22H00334
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
生越 友樹 京都大学, 工学研究科, 教授 (00447682)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
加藤 研一 京都大学, 工学研究科, 助教 (10879406)
淺川 雅 金沢大学, 物質化学系, 准教授 (90509605)
大谷 俊介 京都大学, 工学研究科, 助教 (90911503)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ピラー[5]アレーン / 共有結合性チューブ / 動的共有結合 / 分子認識 / コラニュレン |
Outline of Annual Research Achievements |
ピラー[5]アレーンの片面を封鎖した共有結合性分子チューブの合成を目指し、片面をコラニュレンで封鎖したピラー[5]アレーンを合成した。 片面を封鎖することで、ホスト―ゲスト特性がどのように変化するかを調査した。ゲスト分子としては、空孔に適合する直鎖アルカンであり末端にブロモ基を有する分子を利用した。キャップを施していないピラー[5]アレーンを用いた場合、長さがC4のゲスト分子を最も強く捕まえた。これは、C4がピラー[5]アレーンの高さと一致するため、ブロモ基横のメチレンのプロトンとC-H…π相互作用を形成するためである。またC4よりも長いゲスト分子の場合は、会合定数が大きく低下した。一方で、空間の片面を封鎖したピラー[5]アレーンでは、C4のゲスト分子に加え、興味深いことにC9とC12のゲスト分子においても、高い会合を示し、3つの異なる長さのゲスト分子を捕まえる、非常に珍しい現象を見出した。この理由を調べるためにDFT計算による錯体の構造最適化を行った。その結果、C4の場合は、ピラー[5]アレーンの空孔で、ゲスト分子とベンゼン環間でC-H…π相互作用を形成していることが分かった。C9の場合は、ゲストの片方側はC4と同様にピラー[5]アレーンとC-H…π相互作用を形成し、もう片側は、イミン結合部の窒素部分とC-H…N相互作用を形成していることが分かった。C12の場合は、片方側はC4と同様にピラー[5]アレーンとC-H…π相互作用を形成し、もう片側は、ブロモ基がコラニュレン部位に届き、ブロモ基のプラスに帯電したシグマホールとコラニュレンのマイナスのπ平面との間でハロゲン―π相互作用を形成していることが分かった。制限空間を作り出すことで、特異なゲスト取り込み能力を示すことが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画にはなかった片面を共有結合で封鎖したピラー[n]アレーンの合成に成功した。C5対称な分子同士を動的共有結合により、つなぎ合わせることで、目的分子を高効率に得ることができた。さらには、片面を共有結合で封鎖したピラー[n]アレーンは、両面からアクセスできる通常のピラー[n]アレーンとは、全く異なるホストーゲスト特性を示すことが明らかとなった。具体的には3つの異なる鎖長のゲスト分子を捕らえる、という通常のホスト分子ではありえない分子認識能を示した。これらにより、本研究は当初の計画以上に進展しているといえる。
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Strategy for Future Research Activity |
チューブ長と末端封鎖・未封鎖を制御した共有結合性分子チューブの創成 2分子のピラー[5]アレーンをつなぎ合わせた共有結合性分子チューブと片末端を封鎖した共有結合性分子チューブの構造両方の概念を併せ持った共有結合性分子チューブの合成を進める。具体的には、片面を封鎖したピラー[5]アレーンと、両面がオープンのピラー[5]アレーンをつなぎ合わせることで、片面が開いた構造であり、チューブ長が2分子分のピラー[5]アレーンからなる共有結合性チューブの合成を試みる。 不可逆な共有結合を用いた分子チューブの合成 動的共有結合を用いることで、再安定な共有結合性分子チューブを得ることができたが、さらなるチャレンジとして、不可逆な共有結合形成反応を利用することによっても、共有結合性分子チューブの合成に試みる。イミン結合以外の結合様式で分子チューブの合成が可能となれば、共有結合を導入する部分にも様々な機能性官能基の導入が可能となる。それにより、分子チューブ間のスペースを用いた分子認識も可能になると期待される。 分子チューブの応用 これまでの研究から結晶状態のピラー[n]アレーンは、高分子を取り込むことが分かっている。本研究では、チューブ長を制御した有機ナノチューブが得られるため、チューブ長に応じた高分子を取り込むことが期待される。様々な分子量の高分子に有機ナノチューブを作用させたときの分子量選択性について調査する。またチオフェンのようなモノマーを取り込ませて重合を行うことで、導電性高分子を被覆した分子被覆導線の合成を行う。ポリチオフェンは重合により不溶化してしまうため、通常は無定形のポリマーが得られるが、チューブ長の揃った有機ナノチューブ内での重合により、チューブ長・チューブ形状を反映したポリチオフェンが得られると期待される。
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Research Products
(11 results)