2023 Fiscal Year Research-status Report
仮設住宅集会所「みんなの家」の再利用に見る持続可能性と創造的復興の要因
Project/Area Number |
22K04494
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
末廣 香織 九州大学, 人間環境学研究院, 教授 (80264092)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渕上 貴代 近畿大学, 産業理工学部, 講師 (30907936)
野口 雄太 福岡大学, 工学部, 助教 (40881090)
田上 健一 九州大学, 芸術工学研究院, 教授 (50284956)
内田 貴久 崇城大学, 工学部, 助教 (80882761)
佐藤 哲 熊本県立大学, 環境共生学部, 准教授 (90511296)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 熊本地震 / みんなの家 / 集会所 / 仮設住宅 / 利活用 / 移設 |
Outline of Annual Research Achievements |
2016年熊本地震をきっかけに仮設住宅団地に整備された木造の集会所「みんなの家」は、その後の仮設住宅団地の閉鎖後とともにその役割を終えたため、熊本県が中心となってその利活用を進めてきた。この利活用方法には、建設された敷地でそのまま用途を変更して使い続けられるもの。曳家して使われるもの、解体移築されて使われるもの、解体されて部材のみが再利用されるものまで多様なケースがある。みんなの家は全部で84件あったが、その大半の71件が解体移築という手法で利活用されていた。2023年度の研究では、複数のみんなの家や仮設住宅を解体移築し、一つの建物として再構成して活用する「合築」の事例を取り上げ、その中で最終的に集会所的な活用をした14事例について詳細に調査を進めた。合築という手法を使えば、従前の建物より面積が広く、形状も異なる新しい建物として生まれ変わらせることができる。この手法を効率化できれば、仮設住宅や集会所の貴重な資源を、廃棄せずに地域で有効活用するための、大きな可能性を開くと考えられた。 そこで実際の手法の詳細や課題を明らかにするために、解体移築に関わった行政担当者、設計者、施工者といった関係者にヒアリングを行い、計画や施工に関する資料を提供いただいた。合築された建物は、在来木造という日本で最も一般的で融通が利きやすい技術を用いているが、それぞれ設計者が異なるために、架構形式や寸法が異なる場合がほとんどである。このように異なる建物を合築するために、設計や施工の現場でどのような工夫がなされたのか、またその場合に、利活用しやすかった部材の特徴や利活用の割合がどの程度だったのかについて、事例の比較を通して明らかにした。こうした研究成果については、日本建築学会九州支部研究発表会にて発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2023年度の研究は、前年度に進まなかった現地でのヒアリング調査なども実施できたので、ほぼ予定通りに進んだといえる。しかし、コロナ禍で進められなかった分を取り戻すまでには行かず、研究メンバー全員が予定通りの活動ができなかったこともあり、詳細に調査できた事例の数はまだ限られている。また、この2年間でさらに利活用が進んだ事例もあり、最終年度に84棟の「みんなの家」すべての事例について詳細な調査を完了するのは難しい状況である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究で、利活用の全容は把握できた。また調査を進めるにつれて、それぞれの事例ごとに、利活用に関わった設計者や施工者の考え方、地域の事情などがかなり異なることも明らかになってきた。 24年度は、これまでの調査で得られた知見を再度整理し、今回の利活用事例の中で特に特徴的だと考えられるものに対象を絞る方向で研究を進める。さらに研究の組み立てとまとめ方を検討してから、共同研究者と協力しながら、必要な補足調査を行う。最終的には、「みんなの家」の利活用について、計画時、施工時、利活用時それぞれのステージでの留意事項と可能性をまとめた資料を作成し、学会でも発表する。 今後の災害時にも応用できる研究成果は、各自治体とも共有し、被災地の支援活動を行うKASEI(九州建築学生仮設住宅環境改善)プロジェクトのウエブサイトでも公開する。 本研究チームは、KASEIのメンバーで構成されており、現地での支援活動と並行しながら研究を進める。また、能登地震被災地からも復興に関する支援の依頼を受けている。今回の研究成果を、こうした活動にもつなげてゆきたい。
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Causes of Carryover |
2023年度は、研究代表者を中心にほぼ予定通りに研究を進めることができたので、一定の予算を使用した。しかし、研究分担者については、他の業務や研究と予定が重なったことや、調査に必要な人材が確保できなかったことなどで、予定通りの研究ができなかったケースがあった。2024年度については、再度研究分担者との打ち合わせを行い、予算配分の見直しも含めて、適切に研究費を活用してゆく。
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Research Products
(2 results)