2023 Fiscal Year Research-status Report
ペプチド核酸(PNA)による細胞内核酸操作技術の開発
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22K05350
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
愛場 雄一郎 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (10581085)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | DNA / PNA / ペプチド核酸 / 人工核酸 / 核酸 / 遺伝子 |
Outline of Annual Research Achievements |
DNAやRNAの配列選択的な認識は、生命現象の解明や遺伝子発現制御などにおける基盤的な技術であり、その達成に向け様々な研究がなされてきた。その中でもDNAに化学修飾を施した人工核酸は、その設計が簡便なことからこれまで広く研究されてきた。人工核酸では、核酸の相補性を利用した2本鎖形成により、標的核酸の配列特異的な認識を達成可能である。しかし1本鎖状態で存在するRNAに対し、天然のDNAは多くが2本鎖状態で存在し、人工核酸を適応するにはさらなる工夫が必要であった。それに対し本研究課題では、2本鎖DNAを直接認識可能なPNAのインベージョンと呼ばれる現象に着目し、細胞内に存在するDNAやRNAを効率的に認識する技術としてPNAを展開することを目的とした。また、我々が独自に開発したparallel型インベージョンという新たなDNA認識様式を利用することで、より応用性の高い方法論の確立を目指した。 本年度では、昨年度から引き続きインベージョン効率(DNA認識効率)の向上に向けた検討は進めつつ、細胞内の核酸を標的とした応用に向け、その基盤となるPNAの細胞内導入法についての検討を行った。加えて、新たにPNA-ペプチドの調製についても実験を開始し、合成方法や大量調整時の精製についての検討を行った。昨年度検討した細胞内導入に向けた化学修飾については、修飾方法の最適化を行い、PNAの細胞内導入に成功した。また、並行して行っているparallel型インベージョンの研究については、論文投稿したもののreviseの対応が進行中である。この投稿中の論文については、必要な実験等を行いながら検討を進め、最終年度である次年度内までには論文採択を進める予定である。また、それ以外の成果についても、国際論文誌への投稿に向け、必要な実験を行っていく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題では、PNAの高機能化を進め、遺伝子工学ツールへとPNAのインベージョン技術を展開することを目的としている。これに対し今年度では、研究課題②と③に関連して、細胞内応用に向けたPNAの導入技術に関する知見も取得した。また、計画していたPNAとペプチドのコンジュゲートの調製にも着手しており、その知見を積み重ねている。研究課題①に関しては、今後の推進方策で計画していたPNAの2本鎖構造の結晶構造解析に成功するなど、基礎的な知見を取得している。研究計画2年目となり、当初の計画の目標達成できていない部分もありつつ、計画当初は想定されていなかった新たな方向性での大きな進展もあり、総合的にはおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
当初の申請書では、「①立体構造を制御したPNAによるインベージョンの効率化」、「②機能性分子を付与した高機能化PNAの開発」、「③RNAの局在を制御するPNAの開発」の3つの研究を、本研究課題の主要テーマとして挙げている。研究課題①を通し、PNAによるインベージョンの認識効率の向上を図り、研究課題②によりPNAに細胞内応用するうえでの有用な機能を付与し、最終的には課題③でのPNAの細胞内応用を目指した。昨年度までの検討から、課題①は別なアプローチではあるがインベージョン効率の向上に成功し、課題②、③については当初計画していた方法とは異なるもので成果が得られ始めており、そちらの方法論を重点的に検討することを検討している。また全体的に関連する内容として、PNA/DNAの2本鎖構造の結晶構造解析に成功し、これまで明らかでなかった構造的な知見が得らた。その成果を基に、国際学術誌への投稿を行っており、その修正等に必要な実験は継続して行う予定である。また課題③については、検討に必要となるPNAの細胞内導入方法について有力な成果が得られており、実施時の知見を蓄積するとともに、こちらについても国際学術誌への投稿を目指し、論文作成に必要な実験を実施する予定である。
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Causes of Carryover |
得られた成果を基に論文投稿を行い、そのAPCとして使用する予定であったが、リバイズに時間がかかり年度をまたぐことになったため、次年度使用額が生じた。次年度に論文が受理され次第、APCとして使用する予定である。
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