2022 Fiscal Year Research-status Report
熱帯土壌におけるリン利用性が有機物分解・蓄積に与える影響
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22K05931
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
沢田 こずえ 名古屋大学, 生命農学研究科, 特任助教 (60795285)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 哲弘 京都大学, 地球環境学堂, 准教授 (60456902)
國頭 恭 信州大学, 学術研究院理学系, 教授 (90304659)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 土壌有機物 |
Outline of Annual Research Achievements |
土壌有機物量の増加による肥沃度改善によって単位面積あたりの農業生産性を向上させ、「持続可能な集約化」を達成することは、生産性の低下や農地と熱帯林の競合が顕在化している熱帯地域において、喫緊の課題となっている。本研究では、熱帯土壌において、リンの形態と量および微生物の群集組成と機能が、有機物分解・蓄積に与える影響を解明し、効率的な土壌有機物量の増加による「持続可能な集約化」達成を目指す。具体的には、近年急速に発展してきた13Cトレーサー法と分子生物学的手法を応用し、熱帯土壌において、リンの形態と量および微生物の群集組成と機能が、プライミング効果に与える影響を解明する。 2022年度は、基質を添加して培養した土壌における炭素・リン獲得酵素活性や細菌・真菌の量や群集組成を測定し、基質添加による正のプライミング効果との関係を解明した。また、インドネシアの標高が異なる土壌において、微生物群集組成を解析した。 現在、インドネシアとベトナムの土壌において、リンの形態と量を測定するための方法を模索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2022年度は、リンマイニングによる正のプライミング効果が起こることがすでに分かっているベトナムの土壌において、そのメカニズム解明のために、添加なし、無機態窒素のみ添加(N)、無機態リンのみ添加(P)、13C標識グルコースのみ添加(C)、CN添加、CP添加、CNP添加の処理を加えた後培養した土壌における、炭素・リン獲得酵素活性や細菌・真菌の量や群集組成を測定した。その結果、正のプライミング効果は、フォスファターゼによる有機態リンの加水分解とは関係なく起こることが分かった。また、プライミング効果に関わる細菌・真菌群集組成や機能予測解析による機能遺伝子は、同定できなかった。 さらに、インドネシアの標高が異なる土壌において、微生物群集組成を解明した。 現在、インドネシアとベトナムの土壌において、リンの形態と量を測定するために、最適な酵素添加法(多量のフィターゼやフォスファターゼ添加によって遊離される無機態リンの定量)を模索している。
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Strategy for Future Research Activity |
ベトナムの土壌において、リンマイニングによる正のプライミング効果のメカニズム解明のために、有機酸生成にかかわる遺伝子(pqqC)やフォスファターゼ生成にかかわる遺伝子(phoC, phoD)をreal-time PCRによって定量する。また、インドネシア土壌に加えて、よりリン利用性が低いと考えられるカメルーン土壌においても、微生物群集組成を解明する。 リンの形態と量を測定するための酵素添加法については、NaOH溶液抽出によって沈殿した有機物が吸光度測定を妨害することが分かったので、今後は有機酸抽出による測定法を検討する。
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Causes of Carryover |
海外渡航が難しい状況であったため、すでに採取済みの土壌を用いて実験を行ったため、次年度使用額が生じた。そのため、今年度、インドネシア土壌に加えて、よりリン利用性が低いと考えられるカメルーン土壌(すでに採取済み)も実験に供する。
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