2023 Fiscal Year Research-status Report
O-GlcNAc化タンパク質の生体修復機構解明とそれに基づいた線維症治療戦略創成
Project/Area Number |
22K12818
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
伊勢 裕彦 九州大学, 先導物質化学研究所, 准教授 (10324253)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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Keywords | 肝線維化 / ビメンチン / デスミン / GlcNAc / 糖鎖高分子 / コラーゲン |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度では、非アルコール性脂肪肝炎(MASH)による肝線維化モデルマウスに対するGlcNAc糖鎖高分子のAC-GlcNAcによる肝線維化改善効果を検討した。MASH肝線維化モデルマウスにAC-GlcNAcを週2回、4週間にわたり尾静注で投与を行った。その結果、AC-GlcNAcを投与されたマウスの肝切片についてアザン染色を行ったところ、コラーゲンの蓄積減少が観察された。このことから、AC-GlcNAcのMASH肝線維化モデルマウスの肝線維化改善効果を明らかにすることができた。そこで、AC-GlcNAcによる肝線維化抑制効果をさらに増強するためにO-GlcNAc化タンパク質のGlcNAc構造を模倣したGlcNAc糖鎖高分子の作製を行い、線維化改善効果の検討を行った。AC-GlcNAcのGlcNAc価数は、15程度であるが、ビメンチンに対する相互作用に最適な価数であるかどうかについて不明であった。これまでにO-GlcNAc化タンパク質のGlcNAc構造が、細胞表面に出現したビメンチンへの高い相互作用を見出しており、そのGlcNAc価数は数個程度であることが明らかになっている。従って、その価数構造を模倣したGlcNAc糖鎖高分子の設計を行った。その結果、GlcNAcの価数を減少させたGlcNAc糖鎖高分子が、ビメンチンに対して高い相互作用を有することを明らかにし、また同時に高い抗線維活性発現の筋線維芽細胞への誘導が示された。そこで、このGlcNAc糖鎖高分子の四塩化炭素誘導肝線維化モデルマウスに対する線維化改善効果の検討を行った。その結果、線維化改善効果として、コラーゲン蓄積の減少を確認することができた。今後は、これらの知見から新たに設計されたGlcNAc糖鎖高分子によるMASH肝線維化モデルマウスでの肝線維化抑制効果を検証していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MASH肝線維化モデルマウスに対するGlcNAc糖鎖高分子AC-GlcNAcの肝線維化抑制効果を明らかにすることができた。そして、O-GlcNAc化たんぱく質のGlcNAc構造を模倣したGlcNAc糖鎖高分子の設計を行い、AC-GlcNAcよりも高い肝線維化抑制効果を有する構造を明らかにすることができた。本研究課題の進捗状況としておおむね計画通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
O-GlcNAc化たんぱく質を模倣したGlcNAc糖鎖高分子の設計に成功していることから、この糖鎖高分子を用いたMASH肝線維化モデルマウスの肝線維化抑制効果の検証を行う。さらにこのGlcNAc糖鎖高分子の分子量を低下させたものを作製し、尾静注投与だけでなく経口投与も可能かについても検証を行う。そして、肺線維症モデルマウスへの線維化改善効果についても検討する予定である。
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Causes of Carryover |
購入試薬についてキャンペーンの割引対象物品であったため、当初の予定よりも少ない金額で物品の購入が可能になり若干の残金が生じた。今後の計画では、この残金と併せて次年度の購入計画を実施する。
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