2023 Fiscal Year Annual Research Report
A study on the role and actual condition played by neighborhood associations as a community during World War II
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22K13192
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
白木澤 涼子 北海道大学, 経済学研究院, 助教 (90912410)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地域共同体 / 自然災害 / 有事 / 第二次世界大戦 / 明治地方自治体制 / 町内会 / ソーシャルキャピタル |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、第二次世界大戦下、町内会が自ら、人びとの命と暮らしを守るべく果たした役割を明らかにすることを目的としている。 前年度に引き続き、町内会の全国的な史料の渉猟を現地にて行ない、ネット上の検索ではわかり得ない、地域に眠る史料を探し出した。戦争体験記、行政文書と町内会自身による史料である。戦争体験記や行政文書と異なり、戦時下における町内会の史料は、戦災による被害や、戦後、町内会組織そのものが消滅していく中で、全国的に非常に少ない。そうした中、青森県八戸市、滋賀県彦根市などでまとまった史料に出会うことができた。いずれも町内会自身の継続的で地道な整理・保存活動により、失われずに今日に至ったものである。以上の史料により町内会が単なる「上意下達」ではなく、人びとが連携し、地域の特性に合わせて各々の経験や創意工夫によって戦時を乗り切ろうとしたことが明らかとなった。従来の歴史学では、戦時の町内会は、行政の末端組織として受け身で抑圧的であったとの見方が多数を占め、社会学の災害時における町内会の役割に対する高い評価と大きく食い違った。新たな史料は、戦時の町内会の実態を明らかにするとともに、歴史学における町内会のイメージを覆し、社会学との橋渡しとなる。戦時下の町内会に関する新たな知見は、将来の自然災害や「有事」の際の参考となり、人びとの命や暮らしを守るために大いに貢献するものである。 2023年度は、町内会が防空・配給・供出などを担うほか、帝国憲法が定めた「兵役ノ義務」「納税ノ義務」と町内会との関連を新たに視野に入れた。ついては明治地方自治体制の「自治」と特に「兵役ノ義務」との関係に着目し、地方自治体としての郡が消滅した理由を、「自治」と「兵役ノ義務」の関係から論ずる研究報告を行なった(「郡制はなぜ消滅したのか―大陸型の「自治」としての明治地方自治体制」2023年度政治経済学・経済史学会)。
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Research Products
(1 results)