2022 Fiscal Year Research-status Report
水中のナノプラスチックならびに水溶性ポリマーを検出・同定するための技術基盤の創成
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22K19844
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
芹澤 武 東京工業大学, 物質理工学院, 教授 (30284904)
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Project Period (FY) |
2022-06-30 – 2024-03-31
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Keywords | ペプチド / ナノプラスチック / 水溶性ポリマー / 検出・同定 / 機械学習 |
Outline of Annual Research Achievements |
水溶性ポリマーと相互作用し、特徴的で識別可能な蛍光シグナルを発する分子プローブを新たに設計・合成した。その後、得られた蛍光シグナル(教師データ)を分類するための最適な機械学習について検討した。また、その結果を指標として水溶性ポリマーの同定について検討した。本研究の分子プローブは、水中で非共有結合により水溶性ポリマーと相互作用する糊の部位と、その相互作用をシグナル情報へと高感度で変換するための蛍光部位とを有する設計とした。“糊”の部位として、短いペプチド鎖の可能性について検討した。ペプチドには、進化分子工学的手法によりこれまでに見出している、ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)と強く相互作用するペプチドやその変異体を用いた。また、蛍光部位には、ポリマーと相互作用した際に、分子内回転運動性の変化や周囲の誘電率の変化に応じて蛍光強度や極大蛍光波長が変化する環境応答性蛍光基であるアニリノナフチル基を用いた。得られた一連のペプチド分子プローブは、様々な水溶性ポリマーと異なる強さや様式で相互作用し、それぞれの水溶性ポリマーに応じて多様な蛍光スペクトルを示した。得られた蛍光スペクトルのピーク強度や所定の波長間における強度比をそれぞれの水溶性ポリマーに対する特徴的な多次元のシグナル情報(つまり、学習データ)とし、教師あり・なしの機械学習を実施した。例えば、教師ありの多変量解析の一つである線形判別分析により、得られた多次元の情報を次元削減し、各水溶性ポリマーのシグナルを2次元プロット上で分類(クラスタリング)することに成功した。仮想的な未知試料であるテスト用の水溶性ポリマーの蛍光スペクトルを測定し、得られたシグナルを上記の2次元プロットに当てはめることで水溶性ポリマーを同定できることを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
様々な水溶性ポリマーと相互作用し、それぞれに対して特徴的な蛍光スペクトルが得られるペプチド分子プローブの設計と合成に成功した。得られた蛍光スペクトルを教師データとする機械学習について検討し、水溶性ポリマーの分類と、その結果を指標とした水溶性ポリマーの同定にも成功した。ペプチド以外の糊部位やアニリノナフチル基以外の蛍光基については十分には検討できていないが、当初の目標とした、蛍光性の分子プローブを用いた多様な水溶性ポリマーの検出・同定について一定の成果を得ていることから、おおむね順調に推進していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
ペプチド以外の糊部位やアニリノナフチル基以外の蛍光基についても検討することで、分子プローブを多様化し、水溶性ポリマーのより精度の高い分類、同定を目指す。また、水溶性ポリマーの分子量や濃度、ナノプラスチックのサイズや濃度に依存しない検出・同定を実現するために、規格化した蛍光スペクトルを教師データに用いた機械学習について検討する。さらに、溶液だけでなく、分子プローブを濾紙などに固定化して利用することについても検討し、紙ベースの検出・同定についても知見を得る。
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Causes of Carryover |
当初の計画では、ペプチド以外の糊部位を構成要素とする様々な分子プローブを試行錯誤しながら合成するために物品費を使用する予定であったが、ペプチド分子プローブが予想以上に良好に機能することが分かり、それらを中心に研究を展開したため、当初計画よりも物品費が少額となった。他の分子プローブの合成は次年度に実施する予定となっており、その際に物品費を使用する計画である。また、コロナ禍の影響のため、学会のオンライン開催や、オンラインによる情報収集を行う機会が多かったため、当初計画よりも旅費が少額となった。次年度はこれらの多くが対面となるため、その際に旅費を使用する計画である。
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Research Products
(3 results)