2023 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
22KJ2457
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Allocation Type | Multi-year Fund |
Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
河田 和彦 九州大学, 医学系学府, 特別研究員(DC1)
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Project Period (FY) |
2023-03-08 – 2025-03-31
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Keywords | B細胞 / 小胞体 / Ca2+ / 膜タンパク質 / ケモカイン受容体 / IL-10 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は小胞体の恒常性を起点とするB細胞の分化、機能ならびに液性免疫応答メカニズムの解明を目的とした。 2023年度は小胞体膜タンパク質EMC1 (ER membrane complex subunit 1)がB細胞内Ca2+制御とB細胞分化に与える影響のメカニズム解析を行なった。 B細胞におけるEMC1が細胞内Ca2+のどこを制御するかを明らかとするため、B細胞受容体刺激後の細胞内Ca2+変動を測定した。その結果、小胞体Ca2+枯渇後の細胞外から細胞質内へのCa2+取込み (SOCE: Store operated Ca2+ entry)が障害されることがわかった。SOCEによる持続的なCa2+の取込みはB細胞の抑制性サイトカインであるIL-10の産生を正に制御する。そこで、B細胞が産生するIL-10が疾患の抑制に働く疾患モデルマウスとして実験的自己免疫性脳脊髄炎(EAE)モデルを使用し、EMC1依存性Ca2+制御の重要性を評価した。EAEを誘導したB細胞特異的EMC1欠失 (EMC1 BKO)マウスは対照群と比較し臨床スコアが増悪した。さらに、所属リンパ節内のIL-10陽性B細胞数が減少することが明らかとなった。一方、SOCEはB細胞分化に影響がないことが知られているが、EMC1 BKOマウスの脾臓ではB細胞の分化に障害がある。なぜB細胞分化に影響があるか、EMC1 KO B細胞内のどこに変化があるかを調べるため、プロテオーム解析を行なった。プロテオーム解析の結果、膜タンパク質の小胞体への挿入、細胞の遊走に関与するタンパク質が減少した。B細胞の分化は細胞の遊走と密接に関係している。そこで、細胞膜表面に発現する走化性受容体の量とケモカインに対する遊走能を解析した結果、走化性受容体の発現がEMC1 KO B細胞で著減し、ケモカインに対する反応性が低下することが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度の研究計画通り、EMC1がB細胞のカルシウムの調整のどこに機能するかを明らかとし、その結果自己免疫との関係性についてまで検証することができた。また、マルチオミクス解析を行うことでEMC1のターゲット分子の1つが走化性受容体であることを明らかとし、EMC1 BKOマウスの分化異常との関係性まで示すことができたため。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、液性免疫応答にEMC1がどのように関与しているかを小胞体機能と関連する点から明らかとする。具体的には、研究計画に示した通り、EMC1 KO B細胞が抗体産生細胞への分化できるのか否かをin vitoとin vivoで検証し、抗体産生に関与するのかを明らかとする。また、抗体産生細胞特異的にEMC1をKOできるマウスを作成することで直接的に抗体産生細胞におけるEMC1の機能解析を行う。
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Causes of Carryover |
当初予定していた実験の一部を次年度に行うため次年度に繰り越す。物品費用等に使用する。
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