2011 Fiscal Year Research-status Report
マウス肝移植における抗体プローブイメージング法を用いた拒絶反応の診断と病態解析
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23659607
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
細田 充主 北海道大学, 大学病院, 医員 (40443931)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
尾崎 倫孝 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 特任教授 (80256510)
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Project Period (FY) |
2011-04-28 – 2013-03-31
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Keywords | 肝移植 / 拒絶反応 / 生体イメージング |
Research Abstract |
当研究は抗体プローブを用いた生体イメージングによる肝移植後拒絶反応の検出法を開発することを目的としたものであり、本年度はマウスを用いた動物実験系の確立を進めた。当研究では同種異系マウス間で肝移植を行い、拒絶反応を誘導するモデルを用いる。マウスにおいて肝臓は免疫寛容誘導臓器であり、同種異系間の肝移植ではほぼ全ての系統間で臓器は受容されることが知られている。拒絶反応を誘導する方法としては、ドナーとレシピエントに特定の系統の組み合わせを用いる方法やCD25抗体を術前にレシピエントに全身投与し、制御性T細胞の除去を行う方法などが報告されている。当研究では急性細胞性拒絶反応を研究対象としているが、肝移植においては虚血再環流傷害など他の原因による炎症性細胞浸潤を伴うグラフト傷害が生じるため、手術侵襲による影響を最小限とする必要がある。そのため、我々は最初に、動物モデルの安定した作成を目的として、同種同系マウス間の肝移植において術式および麻酔法の改良を行った。操作手順および使用器械に改良を加え、出血量の減少と無肝期の短縮が達成された。また、麻酔回路を用いた吸入麻酔システムを導入することにより麻酔深度の精密な調節が可能となり術後生存率が向上した。その結果、移植後長期生存率が向上し、移植後グラフトの組織所見においても炎症細胞浸潤はごく軽度となった。次にマウス肝移植モデルにおける拒絶反応誘導の条件検討を行った。我々はより自然な形の拒絶反応を誘導するため、種々の系統間で肝移植を行ったが、強い急性細胞性拒絶反応の所見を認める組み合わせを認めるに至ってはおらず、現在野生型マウスを含むレシピエントとマウスの組み合わせの探索を行うと同時に抗体前投与による方法も準備を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本年度の到達目標は拒絶反応の誘導を含めたマウス同種異系肝移植モデルの確立であったが、現在も拒絶反応誘導の条件検討中であり、研究の達成度に関してはやや遅れを認めている。マウス肝移植系は難易度が高いため、技術的な安定化に時間がかかった。特に当研究では拒絶反応に関する精度の高い解析を可能とするため、手術侵襲、出血量、無肝期の長さといったの拒絶反応以外の因子によるグラフト傷害の影響を最小限とする必要があるため、マウス肝移植の技術的改良に多くの時間を要した。また、拒絶反応の誘発のため、種々の系統のマウスを用いて肝移植を行ったが、系統間での解剖学的特徴や手術侵襲への耐性の差により手術手技の調整に時間を要した。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は肝グラフトへの炎症細胞浸潤を表面抗原に対する抗体プローブを用いて非侵襲的に検出するという肝移植後拒絶反応の新規診断法の開発を目指しており、当研究ではその基礎研究としてマウスを用いた実験系の構築を行っている。これまでに拒絶反応評価のため手術侵襲および虚血再灌流傷害を最小限に抑えたマウス肝移植術式の調整が終了しており、現在、拒絶反応誘導法の条件検討を進めている段階である。この動物モデルは抗TCRおよびCD3抗体以外の豊富なマウス用抗体への応用が可能であり、今後の拡張のためにも十分な時間をかけて精度の高い実験系を構築すべきと考え研究を進めている。平成24年度はまず拒絶反応モデルの条件検討を継続して進める。拒絶反応を生じるドナー-レシピエントの組み合わせに関しては現在検討しているBALB/C→C3Hに加え、野生型系統マウスを用いたSWN→B10.D2およびMSM→B10.D10に関する検討も準備中である。また、CD25抗体のレシピエントへの術前全身投与による拒絶反応誘導法についても準備を進めている。次に確立したマウス肝移植後拒絶反応モデルにおいてTCRおよびCD3を標的抗原とした蛍光抗体を経静脈的に全身投与し、浸潤細胞への結合を組織学的に評価することによりプローブ投与プロトコルを作成する。最後に生物発光プローブを上述の実験系に適用し生体イメージングの条件検討および解析を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成23年度は直接経費\1,600,000、間接経費\480,000を計上し、直接経費として物品費\1,103,625、旅費\441,350の合計\1,549,975を使用しており、\50,025が平成24年度使用予定となっている。これは実験計画の若干の遅れによるものであるが、これは前述のように研究計画の修正により解消される予定であり、物品費として使用する予定である。平成24年度はこの\50,025に加え、物品費\800,000(試薬費\400,000、実験動物費\400,000)および旅費\400,000を請求予定である。
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