2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23912002
|
Research Institution | Kyushu National Museum |
Principal Investigator |
高久 彩 独立行政法人国立文化財機構九州国立博物館, 学芸部・企画課, 研究補佐員
|
Keywords | 博物館列品 / 列品分類 / 産業政策 |
Research Abstract |
本研究は、国立博物館における収蔵品デジタルアーカイブのガバナンスの向上を目指すため,文化財がデジタル化される以前の収蔵品という「もの」自体そしてその集合体がどのように公開され,管理・運営されてきたのか、その過程を歴史的観点から考察した。 まず、明治初期における明治政府による博物館の創設過程と、博物館列品分類の変容に着目し、博物館と関わる政策の観点から,博物館の方向性が工業政策や輸出政策などの産業振興政策から美術政策に移行する過程を確認した。 それを踏まえ、次に、明治維新後、産業政策が強化される1875年から79年の博物館の実態に焦点を当て、産業に資するというサウスケンジントン博物館の制度が、どのように受容され、またどのような部分が受容されなからたのかを検討した。具体的には、第1に、サウスケンジントン博物館の設立目的と機能、コレクションの収集と分類方法を考察した。第2に、「澳国博覧会報告書」に示された東京博物館案と施行された博物館とを考察し、博物館の機能の観点からサウスケンジントン博物館との比較を行った。 その結果、明治初期の博物館は、サウスケンジントン博物館をモデルとして運営方法を確立する一方で、製造業博物館の存在意義とも直結する機能面において特異な変容を遂げたことが伺えた。産業に資する博物館を確立する要素である、教育との連動、工芸や工業への美術の応用、そして究極的には美術と科学の融合が目指されるべきであったが、美術と科学が未分化な状況におけるものづくりの環境においては、それらが達成されることはなかったことも明らかとなった。このような特殊日本的な要素から、博物館設立を喫緊の課題とする当時の状況において、土着のミュージアム文化を持たない国家が、ミュージアム制度を受容するということの一端を明らかにすることができた。
|
Research Products
(2 results)