2023 Fiscal Year Research-status Report
毒草の命名法ー植物名に表れる人間の身体部位表現に着目して
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23K00500
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
西本 希呼 京都大学, 東南アジア地域研究研究所, 連携講師 (10712416)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 民族植物学 / フィールド言語学 / 言語多様性と生物多様性 / 植物と人間 / 認知言語学 / 意味論 / 語用論 / 地域研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
毒草は我々の日常生活のごく身近なところに数多く存在する。地域を問わず、毒草と人間の関わりは非常に古い。毒草は有害なだけではなく、治療薬、食糧調達のための矢毒や魚毒、虫除け、地域によっては儀式や呪術での必需品や嗜好品としても使われる。 本研究では、人間の身体部位表現を植物名に含む毒草に着目して現地学術調査及び文献調査を行う。本研究の目的は(1)各言語における毒草名の語彙素構造や形態・統語的構造の分析と記述を行うこと、(2) (1)を通じて、各言語の象徴的用法や各言語話者にとっての毒草の有用性、価値基準、毒草の認識の仕方を解明すること、(3)毒草名の分析から観られる地域や文化を超えた毒草に関する認識や世界観、毒草との関わりや意味づけの共通点と相違点を明らかにすることである。 2023年度は、オンライン調査と現地調査の両方を実施し、5つの国と地域で、「危ない植物」「触れると怪我をする、死ぬと言われている植物」とごく一般の人々に知られている地域固有の植物の現地語名とその由来を収集し、話者や地域による命名の相違や、知識の相違について情報収集を行った。特に薬用植物を有効利用し中国医学の伝統を今も根強く保持している中国の広東省の広州では、非常ひ有益な情報を得ることができた。成果の一部をまとめて国際民族植物学会で発表する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
渡航を希望していた地域はビザの手配が難航し日本国内での文献収集や日本国内での情報収集を中心としたが概ね順調に進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度からはこれまで収集した資料を文献資料を中心に他の言語でも同様の表現や伝承がないか、また、各地に広く分布する毒草に関しては日本の方言を含むできるだけ多くの世界の諸言語の植物名を集め、語彙構造や意味拡張、派生語、比喩表現などの比較研究を行う。さらに、周縁資料としてこれまでに引き続きマダガスカルとトンガでは口承文芸や伝統医療のドキュメンテーションを実施する。民話や口承文芸には頻繁に毒殺や呪術師の話が登場するためである。 なお、昨年度構築した新たな研究協力者と継続して現地調査とオンライン調査を実施予定である。
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Causes of Carryover |
ビザ取得が困難であったり、情勢不安で多少の計画の歪みが生じている。
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