2023 Fiscal Year Annual Research Report
脳卒中・心臓病のCircular Healthcare Systemに関する研究
Project/Area Number |
22H03191
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Allocation Type | Single-year Grants |
Research Institution | National Cardiovascular Center Research Institute |
Principal Investigator |
飯原 弘二 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 病院長 (90270727)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
猪原 匡史 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部長 (00372590)
尾形 宗士郎 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 室長 (00805012)
田宮 菜奈子 筑波大学, 医学医療系, 教授 (20236748)
平松 治彦 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, その他, 部長 (40304125)
竹上 未紗 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 客員研究員 (50456860)
松丸 祐司 筑波大学, 医学医療系, 教授 (70323300)
西村 邦宏 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 研究所, 部長 (70397834)
野口 暉夫 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 副院長 (70505099)
泉 知里 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 部門長 (70768100)
連 乃駿 国立研究開発法人国立循環器病研究センター, 病院, 医師 (70965053)
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Project Period (FY) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Patient Health Record / 心臓病 / 脳卒中 / 人工知能 |
Outline of Annual Research Achievements |
脳梗塞症例のMRIデータを収集し、白質病変や陳旧性脳梗塞が脳梗塞の再発に寄与しうるかを評価した。2013~2017年にMRI画像データを収集し得た409患者(1/3/5年の再発率は 10.1%, 24.0%, 27.3%)を対象に、教師あり学習による予測モデル(3DCNN)及び教師なし学習である異常検知アルゴリズム(SPADE)の2つの手法による再発予測モデルを構築した。1/3/5年以内の再発予測は3DCNNでは0.56/0.64/0.65であったのに対し、SPADEでは0.68/0.63/0.62であった。異常検知は正常例のみを学習データとして扱い、学習した正常例と著しく異なるデータを異常例として検出するアルゴリズムであり、再発率が低い1年以内の再発予測では異常検知が有効に機能したと考えられた。 Circular Healthcare System構築の中核を担う、脳卒中・心臓病におけるデジタルヘルスシステムの先行実装事例の調査を実施した。 脳卒中領域:石川県及び山口県には、血栓溶解療法は実施できるが、血栓回収療法実施医が常勤していないPrimary Stroke Centerのみが点在している医療圏が存在しており、ICTを用いた医療情報共有により、地域の脳卒中医療が支えられていたが、維持費の捻出が今後の課題となっていた。 心不全領域:九州大学や榊原記念病院における、心不全患者を対象とした遠隔リハビリテーションにおけるデジタルヘルス(DH)デバイスの活用状況を調査した。DHデバイスによるセルフケア強化システムを利用した群では、リハビリテーションの実施率向上や患者のセルフケア行動指標の改善が達成されており、患者のEmpowermentに有用であることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
日本脳卒中学会研修施設を対象として脳卒中分野におけるDHの導入状況に関する施設調査を行い、123施設より回答を得た。デジタルシステムによる病診連携は25%の施設で導入されており、主にJOIN(Allm社, 10施設)やSynapse Zero(FujiFilm社, 4施設)などが病院主導で導入されており、脳卒中分野で活用されていた。自治体の予算でサーバーを構築し運営する施設も見られた。一方で、未導入の理由としては、サービスを提供する人的資源の不足やサポート体制の未整備を挙げる施設が多かった。22%の施設では救急隊と病院の連携においてデジタルデバイスが活用されており、大半が自治体主導で運用されていた。脳卒中病院前スケールや脳卒中主幹動脈閉塞スコアなどの共有状況は一部の地区のみでの活用(5.7%)にとどまっていた。脳卒中画像診療支援システムは16.3%の施設で導入されており、急性期脳梗塞における虚血巣の診断を支援するRAPID(Ischema View社, 8施設)、Vitrea(Canon社, 8施設)が導入されていた。遠隔モニタリング(12.2%)を導入している施設は見られたが、ほとんどが循環器領域での活用であり、てんかんの遠隔モニタリングは1施設のみであった。一方で、遠隔医療(7.3%)、入退院支援(4.9%)、診療支援システム(4.1%)、循環器病の危険因子における疾患管理システム(0.8%)、遠隔リハビリテーション(0%)、服薬管理アプリの導入(0%)など、急性期後や維持期に関与する項目ではデジタルトランスフォーメーションが不十分であることが浮き彫りとなった。 循環器分野に関しては、心不全領域、虚血性心疾患領域、大動脈緊急症領域毎に設問を設定し、日本循環器学会協力のもと、学会の研修・研修関連施設宛に施設調査を依頼中である。
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Strategy for Future Research Activity |
循環器病対策では、健康寿命の延伸を目指し、急性期病院とかかりつけ医との連携、重症化・再発の予防が取り組むべき施策として掲げられている。虚血性脳卒中後の患者は、急性期治療の進歩により短期アウトカムは向上したものの、10年間に約半数の患者が再発するとされ、また心血管イベントの再発や脳卒中後の合併症発症のリスクが高い。さらに持続的な機能障害とは別に、回避可能性のある中長期的な合併症は脳卒中後の機能障害の重大な要因であり、かかりつけ医と多職種による協調的介入の重要な対象である。さらに、実際の生活における危険因子の管理と国際的なガイドラインで推奨されている管理との間には大きなギャップがあり、その結果、回避可能な再発が多数生じている。シームレスな医療の提供には、急性期病院とかかりつけ医、多職種の医療関係者、そして患者が、ICT技術を活用し、画像を含めた医療情報を共有し、予後予測に基づいた個別の疾患管理ができれば、脳卒中・循環器病の再発、重症化を効率的に未然に防ぐことができる。 阪急阪神ホールディングスと共同で脳卒中及び循環器病の疾患管理を目的としたPHRアプリケーションを開発し、同社が提供している患者を中心としたクラウドサービスとの連携による疾患管理手法を検討した。 Pilot Studyとして、70~80代を中心とした脳卒中を発症した患者様に協力いただき、疾患管理を目的としたアプリケーションを使用開始した。1ヶ月後のアンケートにて使用感を確認し、操作性に問題がなく、継続使用を検討していることなどが聴取できた。今後は回復期や維持期の医療機関、薬局、介護事業所等にもクラウドサービスに参入いただき、多職種・多施設連携によるシームレスな患者管理を実施予定としている。
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