2013 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質導入系LENAによる安全な分化・脱分化誘導法の確立
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24310146
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Research Institution | Osaka Prefectural Institute of Public Health |
Principal Investigator |
駒野 淳 大阪府立公衆衛生研究所, その他部局等, 研究員 (60356251)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 哲 国立感染症研究所, その他部局等, 研究員 (50396959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 移植•再生医療 / バイオテクノロジー / レンチウイルス様ナノ粒子 / 脱分化法 / ナノバイオ |
Research Abstract |
iPS細胞を利用した再生医療において、治療用細胞の悪性化やウイルスベクターの混入には大きな懸念がある。プラスミドベクターを用いたトランスフェクション法がこれまでの中でもっとも安全性が高いとされているが、トランスフェクション法においても宿主ゲノムを損傷する可能性は高く、より確実に安全性を担保できる方法の確立がiPS細胞の臨床応用には必須と考えられる。我々はレトロウイルス基礎研究をもとにレンチウイルス様ナノ粒子(Lentivirus-like nanoparticle, LENA)を用いたタンパク質デリバリー法を開発した。既法で得られるものより格段に安全性の高いiPS細胞を樹立する方法としてLENA技術を基盤としたタンパク質デリバリー法は最適である。本研究ではLENA技術をコアにした脱分化法を開発し、再生医療を実用化するために有用な基盤技術を提供する。 平成25年度までに、我々は脱分化因子Oct3/4を含有するLENAの調整に成功し、各種条件を試験する事により至適な条件でこれを暴露する事により293細胞で脱分化マーカー遺伝子の一つであるfgf-4の発現増強を確認した。この活性は同じ脱分化因子Sox2を有するLENAを共存させることにより増強される可能性が示唆された。この結果は2つの研究機関で独立に実施されて再現性が認められた。この結果はタンパク質の直接導入による安全なヒトiPS細胞の誘導やdirect reprogrammingによる治療が技術的に可能であることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脱分化因子の機能を再現性よく鋭敏に測定するための実験系として、レポーター細胞による方法よりも、脱分化マーカーのRT-PCRが最も有用であることが明らかになるまでに時間を要したことが最も大きな理由である。さらに、独立の研究機関による実験の再現性を確認するために時間を要した事も要因である。しかし、後者の要因に関しては時間以上に価値のあることと認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
我々は脱分化因子Oct3/4-LENAにより293細胞で脱分化マーカー遺伝子fgf-4の発現増強を確認した。この活性は同じSox2-LENAを共存させることにより増強される可能性が示唆された。今年度は上記の結果をさらに確固たるものにするため、Oct3/4の標的因子である第2、第3の脱分化マーカー遺伝子NanogやOct3/4を評価する。また、潜在的に実験結果に影響する「LENA調整時に発生するLENA産生細胞からの脱分化マーカー遺伝子の混入効果」について検証する。さらに、脱分化を生物学的に評価するため、Oct3/4-LENAによるヒト繊維芽細胞のダイレクトリプログラミングをSox2-LENAの共存下で実施する。脱分化のマーカーとしてCD45を用い、CD45陽性細胞への分化誘導の効率と再現性を評価する。さらに分化誘導したCD45陽性細胞を継代し、細胞の脱分化状態が機能的であるかどうかについてmyelocyte(CD13+/CD33+細胞)、erythrocyte(CD71+細胞)、monocyte(CD14+細胞)などへの分化誘導能にて評価を試みる。SCIDマウスの皮下に分化誘導したCD45陽性細胞を移植して継代し同様の評価を繰り返し行う。マウスにおいて細胞が腫瘍化するか、拒絶反応的要素が検出されるかも併せて評価する。CD45陽性細胞の全ゲノム配列を次世代核酸配列決定装置HiSeqで決定し、ゲノムの完全性維持効率を評価する。コントロールとして、Oct3/4導入レンチウイルスベクターを用い同様にCD45陽性細胞の誘導を行う。今後は脱分化因子Klf4、c-Mycへの適応拡大と4因子によるiPS細胞誘導実験やLENAによるiPS細胞誘導の効率を測定し、これを改善するための方法を開発する。また、分化誘導因子によるdirect reprogrammingへの適応拡大を行い、日本初のオリジナル技術として広く安全な再生医療を支える技術基盤としてLENA法を確立する。
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