2012 Fiscal Year Annual Research Report
高等および下等植物におけるプロゲステロンの存在と生殖器形成調節機能
Project/Area Number |
24380064
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (B)
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
横田 孝雄 帝京大学, 理工学部, 教授 (40011986)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | プロゲステロン / ジャスモン酸 / 生殖器分化 / 花芽分化 / トウモロコシ |
Research Abstract |
植物におけるプロゲステロン(PROG)の役割を明らかにするために以下の研究を行った。 (1)植物、微生物におけるPROG生合成・代謝経路の解明。代謝実験に必要なPROGの前駆体候補pregnenolone、PROG、その還元代謝物候補5a-dihydroprogesteroneおよびその代謝物候補allopregnanoloneとepiallopregnanoloneの重水素化合物の合成を行なった。重水素化pregnenoloneをトウモロコシのtasselseed2変異体(ts2)の頂花(tasselseed)および野生型の頂花(normal tassel)にあたえてその代謝を検討した。その結果、pregnenoloneはPROGとepiallopregnanoloneに代謝されることがGC-MSにより明らかにされた。また、ts2の頂花では代謝速度が遅いことが分かった。一方13Cコレステロールをトウモロコシの葉、タバコの葉、酵母菌に代謝させたが,pregnenoloneやPROGの生成は認められなかった。 (2)植物においてpregnenoloneからPROGを合成する酵素の同定。この酵素は様々な論文より、TASSELSEED2(TS2)と推定できるので、この酵素のmRNAを化学合成し、大腸菌に組み替こんだ。現在この組み替え体を用いて重水素化pregnenoloneの代謝実験を試みている。 (3)PROGの雌花雄性化作用の投与実験による証明実験。トウモロコシの野生型の雄穂(tasselでは雌花が脱落して雄花が発達するのに対して、tasselseed1(ts1)変異体あるいはts2変異体では雄花が脱落して雌花が発達する。本研究の仮説にたてば、PROGはts1あるいはts2変異体の表現形をrescueすなわち正常にする(すなわち雌花化していたのを雄花化する)はずであるので、これら変異体にPROGを投与した。この目的の為に、すでに、三共化成に調製させたPROG製剤をよびPROGの含水アルコール溶液(Tween20入り)を、ts1変異体の頂部に処理した。その結果、PROG処理によりts2変異体の頂花(メス花)がオス花化した。ts1変異体はジャスモン酸欠損変異体であるので、ジャスモン酸がPROGの合成を調節している可能性が示された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pregnenoloneからprogesterone(PROG)への代謝が明瞭に示された。このような実験結果は過去殆どなく,極めて重要と考えられる。また、PROG投与が、ジャスモン酸欠損によってメス花化したトウモロコシ頂花をオス花に変えることを証明したことより、雌雄決定にPROGが重要な役割をしていることが示された。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)PROG合成酵素TS2の組替え大腸菌を使って、本酵素がpregnenoloneをPROGに代謝することを証明していく。 (2)また、同時にts2変異体の表現型(オス花のメス花化)がPROG欠損により引き起こされていることを証明するために,PROGの投与による回復実験を行なう。 (3)PROGのステロールからの生合成は植物組織に直接与えても証明できなかったので、新たな方法を用いて証明する。即ち、トウモロコシやタバコなどの無細胞抽出液を調整し,NADPH等の補酵素等と一緒にコレステロールを代謝させ,その代謝物を分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究の進展に伴い、更なる人件費の増加が見込まれること、また、分子生物学試薬に関する経費増大が予想されることから、これらの出費に対処する。
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