2012 Fiscal Year Research-status Report
大学教育における教員と図書館員の連携の構築に関する比較研究
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24500293
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
長澤 多代 三重大学, 附属図書館研究開発室, 准教授 (30346944)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 情報リテラシー教育 / 大学図書館の学習・教育支援機能 / 大学教育における教員と図書館員の連携 / 教職協働 / 学習支援 / 教育支援 / 高等教育開発 / ケース・スタディ |
Research Abstract |
本研究の目的は,大学教育における教員と図書館員の連携に関する比較研究の一環で,エッカード・カレッジ(Eckerd College)とクイーンズ大学(Queen’s University)のケース・スタディによって次に示す3つの研究課題を明らかにすることである。(1)大学図書館が実施する学習支援や教育支援において,教員と図書館員はどのように連携しているのか。(2)図書館員の教員に対するアプローチの中で,何が教員と図書館員の連携の構築を促す要因となっているのか。(3)教員と図書館員の連携の構築を促す大学図書館内外の要因は何か。ここで得られたモデルをこれまでに明らかにしたケース・スタディのモデルと比較分析し,汎用性の高いモデルを構築する。 2012年度には,クイーンズ大学のケース・スタディとして,これまでに実施していた訪問調査(2011年9月に実施)で得た情報の整理・分析を進めるとともに,9月17日から9月24日まで,追跡調査となる訪問調査を実施した。この訪問調査の主な内容は次のとおりである。(1)教育学部,法学部,健康科学部(看護学科)において,図書館員が実施する情報リテラシー教育(科目関連指導)を観察した。(2)観察した科目関連指導を担当する図書館員に聞き取りを行ない,学習支援(科目関連指導を含む)や教育支援を計画・実施したプロセス,教員との連携,日常的な教員その他大学関係者との交流,必要となる専門的資質とその修得についてたずねた。(3)教育学部では,科目関連指導を導入した授業科目の担当教員にも聞き取りを行ない,授業計画と図書館利用の関係,図書館員との日常的な交流,図書館利用の経験等についてたずねた。 以上の調査によって,3つの研究課題に関する基本的な情報を得ることができた。これをもとに,2013年度以降の追跡調査における調査対象についての計画を立てた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述のように,本研究の目的は,エッカード・カレッジとクイーンズ大学のケース・スタディによって,各大学のモデルを構築するとともに,これまでの研究で明らかにしたモデルを含む複数のケースを比較して,より汎用性の高いモデルを構築するための最初の手がかりを得ることである。次の計画によって,この目的を達成する。①文献調査と訪問調査によって,エッカード・カレッジ及びクイーンズ大学に関する情報を収集する。②帰納的分析法,特に,グラウンデッド・セオリーの手法を用いて,エッカード・カレッジとクイーンズ大学それぞれのケース・スタディのモデルを構築する。③テーマ的コード化の手法を用いて,これまでに実施したケース・スタディによって得られたモデルと②のモデルを比較分析し,共通点や違いを明らかにする。 2012年度には,クイーンズ大学のケース・スタディとして,①を実施し,ケースに関する基本的な情報を得た。現在,情報の整理・分析を進めている。 全体の研究計画における2012年度の達成度として,「おおむね順調に進展している」と評価した。その理由は以下のとおりである。(1)情報の収集については,当初の計画どおり,クイーンズ大学で追跡調査を実施し,関連する情報を広く収集することができた。(2)情報の分析・整理については,現在,記述的ケース・スタディの作成に向けて作業を進めている。(3)成果の報告については,記述的ケース・スタディを完成させておらず,学会での口頭発表や学術雑誌でクイーンズ大学の調査結果を直接的に公表してはいないが,招待講演等でその一部を公表した。
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Strategy for Future Research Activity |
申請時の計画は次のとおりである。2012年度には,クイーンズ大学の訪問調査を実施する。ここで収集した情報をもとに記述的ケース・スタディを作成し,これを国内の学会で口頭発表し,国内の学術雑誌で論文として公表する。2013年度には,エッカード・カレッジの文献調査と訪問調査を実施する。これと並行して,クイーンズ大学の解釈的ケース・スタディを作成し,国内外の学会で口頭発表し,国内の学術雑誌で論文として発表する。2014年度には,エッカード・カレッジの訪問調査(追跡調査)を実施する。これをもとに,エッカード・カレッジの記述的ケース・スタディ,解釈的ケース・スタディを作成して国内の学会で口頭発表し,国内の学術雑誌で論文として発表する。また,この2つのケース・スタディをもとに構築したモデルを,テーマ的コード化という比較分析の手法を用いて,これまでのケース・スタディをもとに構築したモデルと比較する。 2012年度の達成度については,前述のように,「おおむね順調に進展している」と評価した。2013年度については,上記の計画どおりに,エッカード・カレッジの訪問調査を実施し,情報リテラシー教育の観察,図書館関係者や教員への聞き取りを行なう。クイーンズ大学については, 2012年度までに得た情報の整理・分析を進めながら,訪問調査(追跡調査)によって更なる情報を収集する。2014年度については,エッカード・カレッジの訪問調査(追跡調査)を実施するとともに,必要に応じて,クイーンズ大学でも訪問調査(追跡調査)を実施する。 研究計画書には,上記の計画が計画どおりに進まない場合であっても,2014年度までに情報収集を終え,2015年度以降に情報を分析し,成果を公表するとしていた。2014年度までに,2つのケースについての記述的ケース・スタディの完成を目指しながら,必要な情報の収集に重点を置いて進める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2012年度の研究費については,計画していた研究の打ち合わせ(国内)について,所属先の研究費を用いることができた。これによって使用しなかった研究費を,他の用途(抜刷の送付作業のための人件費等)にあてるとともに,研究費の有効活用のために,その一部を翌年度に繰り越すこととした。 2013年度の研究費の使用計画は,次のとおりである。(1)図書の購入:概念枠組みに関する図書,図書館情報学関係の図書,研究方法論に関する図書,(2)国内外における研究打ち合わせ,(3)訪問調査(米国のエッカード・カレッジ,カナダのクイーンズ大学),(4)図書館情報学関係の国際学会への参加・情報共有,(5)発表した論文の抜刷の購入と国内外の関係者への送付。2012年度からの繰り越し分については,(5)抜刷の送付作業にともなう人件費として用いる。 研究費を上記の計画どおりに使用できない場合には,研究計画の最終年度である2015年度に繰り越し,有効活用を図る。
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