2013 Fiscal Year Research-status Report
免疫系に作用するイムノセラミックスの創製とその機能
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24500531
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
相澤 守 明治大学, 理工学部, 教授 (10255713)
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Keywords | イムノセラミックス / アパタイト / イノシトールリン酸 / ホウ素含有アパタイト / 免疫細胞 / T細胞 / NK細胞 / フローサイトメトリー |
Research Abstract |
これまで生体機能の一部あるいは全部を代替する目的で開発されている「バイオマテリアル(生体材料)」は人工材料であるため、免疫による拒絶がないことが一つのメリットであった。しかしながら、もし材料と免疫系を司る細胞とをin vitro系で培養し、それらの相互作用を通して、免疫系を司る細胞を活性化させることができれば、高額なサイトカインを利用することなく、患者の回復力を増強させて、病気を治癒させることが可能となる。本提案では、バイオセラミックス表面を2つの方法、すなわち「表面修飾」および「固溶体形成」により免疫系を亢進する新規な「イムノセラミックス」を創製し、その免疫特性を評価している。 今年度は、前年度の「固溶体形成」のアプローチも継続しつつ、特に「表面修飾」によるアプローチについて注力した。まず、水酸アパタイト(HAp)セラミックスを作製し、その表面を免疫賦活作用を有すると報告されているイノシトールリン酸(IP6)で修飾した。このIP6を表面修飾したHApセラミックス(IP6-HApセラミックス)をイムノセラミックスのモデルとして検証した。 まず、マウスから脾臓を取り出し、赤血球を取り除き、脾臓細胞(ヘルパーT細胞、キラーT細胞、B細胞)の回収を行なった。これらの脾臓細胞をIP6-HApセラミックス上に播種して所定の期間培養した。細胞を回収した後、フローサイトメトリー解析を行ない、各種免疫細胞の割合を調査した。その結果、脾臓細胞をIP6-HApセラミックス共存下で培養すると、ヘルパーTおよびキラーT細胞の割合が高い値を示し、逆にB細胞の割合は低下した。 このことから、IP6-HApセラミックスは、前年度に報告したホウ素含有アパタイトとともに、免疫系に働きかける機能を持った新規なバイオマテリアル 「イムノセラミックス」と結論できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、当該研究は、申請時に記載したマイルストーンに沿って概ね順調に進展している。当該研究では、免疫系に働きかけるイムノセラミックスを創製し、免疫機能を調査することを目的としており、以下の3つの項目で推進している。 1) 免疫系に働きかけるイムノセラミックスの試製 2) NK細胞の効率的な採取方法およびその機能発現検出方法の検討 3) 試製したイムノセラミックス共存下でのNK細胞の培養と機能発現 平成25年度は、前年度に引き続き、上記の3つの項目のなかで、特に1)および2)に注力した。1)では、「アパタイトセラミックス上へのイノシトールリン酸の表面修飾」および「ホウ素含有アパタイトの作製と表面特性」いずれも計画通り研究を実施し、研究業績からも分かるように、ある一定の成果をあげている。また、2)では、前年度に確立した「マウス脾臓およびリンパ節からのNK細胞の採取と培養方法」に係わるプロトコルを利用し、「イムノセラミックス」の創製とその免疫機能についての検討を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでに確立したプロトコルを用いて、i) イノシトールリン酸を表面修飾したアパタイトセラミックスおよびii) ホウ素含有アパタイトセラミックス上で培養したNK細胞の機能発現を調査する。i)では、コントロールとして、イノシトールリン酸を固定化していない水酸アパタイトとし、これと比較して、NK細胞の増殖性や表面抗原の有意な発現が認められた場合には「ポジティブ」な結果として受け入れる。さらに、NK細胞の「細胞障害性」についても評価を行なう。また、ii)では、ホウ素を含んでいない純粋な水酸アパタイトをコントロールとして実験を行なう。ここでは、2つのプロセスを検討するが、より高い活性を示す材料を「イムノセラミックス」のモデル材料とする。 ついで、本研究で決定したイムノセラミックスをモデル材料として、NK細胞が侵入可能な細孔径(150-300 μm)を備えた「多孔質セラミックス」を作製する。この加工により、セラミックスとNK細胞とが相互作用できるサイトが大幅に増大する。この多孔質セラミックスを「ラジアルフロー型バイオリアクター」に装填し、三次元循環培養することで、高活性化なNK細胞を効率的かつ大量に培養可能な「バイオリアクターシステム」を構築する。将来的には、このシステムを活用し、「LAK療法」の臨床応用につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額が生じた理由は、実験を効率的に実施したこと、および、成果報告の旅費を別の大学予算から支出したなどが主な理由である。 次年度(2014年度)は、培養実験をこれまでよりも多く実施する予定であり、また成果報告の機会も多いので、その予算として補填する計画である。
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