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2012 Fiscal Year Research-status Report

困難を抱えた子どもの育ちに対する子どもカルテの導入と包括的支援システムの構築

Research Project

Project/Area Number 24500915
Research Category

Grant-in-Aid for Scientific Research (C)

Research Institution埼玉純真短期大学

Principal Investigator

稲垣 馨  埼玉純真短期大学, その他部局等, 講師 (80512045)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2015-03-31
Keywords育ちに困難を抱える子ども / 発達障害 / 保幼小中連携 / 包括的支援システム
Research Abstract

本研究は、H市の発達障害や情緒障害、不適応など「困難を抱えた子どもの育ち」に対する包括的支援システムの構築と実践を目的とする。発達障害など、育ちに困難を抱えた子どもの場合に問題が生じやすい移行期に着目し、切れ目のない支援の基盤的なツールとなる「子どもカルテ」を開発することで、関係諸機関の情報を共通化・共有化できるようなシステムの構築を目指している。今年度は「子どもカルテ」の基礎となるベースカルテの作成を目的として文献研究を行い、続いて2つの調査を実施した。
H市には保育園11園、幼稚園4園、小学校11校、中学校3校があるが、H市の教育委員会の協力のもと、H市内の保育園、幼稚園、公立小中学校に対して調査を依頼し、同意が得られた保育園1園、小学校2校、中学校2校の教職員に対して調査を実施した。
今年度実施した調査は次の通りである。
1)面接調査(調査1):続く調査2の予備調査として、保育園1園、小学校1校、中学校1校の教職員15名に対して面接調査を実施した。調査の目的は、子ども支援の現状評価と今後の展望を問うため、これまでの経験を踏まえて「育ちに困難を抱える子ども」像を教職員がどのように捉えているか、またそのような子どもに対する支援の実態を把握することであった。
2)質問紙調査(調査2):予備調査の結果を踏まえて、保育園1園、小学校2校、中学校2校の教職員120名に対して質問紙を配布し、「育ちに困難を抱える子ども」に対応した経験に関する事柄およびその支援に必要な情報についての調査を実施した。調査の目的は、「子どもカルテ」の試行版となるベースカルテに盛り込む項目を設定することであった。99名(82.5%の回収率)の回答から結果を分析し、ベースカルテを作成した。
来年度以降は、勤務先に開設された「子ども支援センター」を中核とした地域支援システムの構築に向けて、さらに研究を進めたい。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初今年度の計画では、文献研究と面接調査、質問紙調査を実施することで、「子どもカルテ」の基礎となる「ベースカルテ」の作成を目標としていた。そのため、関係諸機関をつなぐ既存のツールやシステムの活用についての調査を実施し、さらに新たなシステムの必要性を検討することで、実際の体制作りへの方略が摸索された。そのため昨年度もH市の巡回相談に関して協力関係にあったH市教育委員会の協力を得て調査を実施したが、調査依頼の段階から協力体制等に関して問題が生じたため、調査対象が限定されるなど、当初の見込みよりも低い到達度となった。
今年度の質問紙調査の結果、校種間で個々が抱える子ども観の違いや、システム間のギャップを含めた文化的な差が見られた。
「育ちに困難を抱える子ども」と関わった経験は全ての教職員が有しており、97%が現在も在籍していると回答していた。全体の18%の教職員がこれまでの自身の対応を肯定的に評価していたが、27%がこれまでの対応を満足いくものと捉えていなかった。また全体の傾向では、例としてADHDなど、クラス集団を逸脱する多動や落ち着きのなさ、暴力行動など、比較的理解が容易な問題を呈する子どもに関する知識は十分であると認識していたが、実際の対応では最も指導の難しさを感じているようであった。障害に関する知識等は、不登校や自閉症など、比較的単純な現象の理解で捉えられる場合は問題ないが、知的障害や自閉症スペクトラム、心身症など、他の障害や問題との判別が困難で、正確なアセスメントが必要な場合、知識が乏しいと回答していた。また問題が生じた時、これまでの支援でなされてきた具体的な対処方法など、現状の問題解決にすぐに役立つ情報を求めており、本研究が目的とする情報の共通化・共有化の際に、実際に現場で求められている内容を明らかにすることが出来た。

Strategy for Future Research Activity

現在H市の困難を抱える子どもの支援は、関係諸機関が独自のアセスメントに基づき、支援計画を作成、実施している。また既存の情報共有のツールであるサポート手帳は、利用者側の利益を目指すものであり、実際の現場で支援者側が活用できるツールとしての視点は乏しいと言える。
今年度の研究では、子どもが持つ障害や問題への理解が困難な場合、実際に役立つようなアセスメント機能を持ち、これまでの支援の実際が盛り込まれた情報ツールが現場では求められていることが明らかになった。来年度以降は関係諸機関の支援文化の違いを超えた相互理解の促進と「次につなぐ支援」を前提としたツールの開発が必要であろう。それは生涯発達的視点から子どものライフサイクルを展望したアセスメントや支援記録を網羅した情報型ツールとなる「子どもカルテ」が目指す方向性を示しており、今後さらに完成に向けて研究を進めていきたい。
また子どもカルテの導入と実施、さらに実施後に定着したツールとして利用されるためには、既存の連絡協議会の枠を超えた、個々の教員同士による相互交流を含めた教育的な機会を設けることが重要であろう。既存の巡回相談と子ども支援センターでの活動を通じて、広く地域に協力を求めることで、利用者側(関係諸機関の教職員、保護者など)に対する研修や勉強会の実施に向けて努力したい。
今年度の調査協力は1園と4校にとどまったが、来年度はさらに多くの協力を求めることで、包括的支援ネットワークの構築に向けて、研究と実践を並行して進めていきたい。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

次年度は今年度に作成したベースカルテを、実際の現場で、実際の事例に対して試験的に用いてその結果を吟味し、ベースカルテを改訂する作業が中心となる。また「子どもカルテ」導入に向けて、地域の利用者側を対象とした勉強会の実施も今後予定されている。調査の実施や勉強会の開催のためには、現場に出向くための旅費や先方への謝金、必要な物品費、またデータの整理のための謝金や物品費の支出等が予定されている。
また今年度はこれまでの研究の成果報告のため、学会での発表を予定しており、このための旅費およびその他支出が発生する予定である。
さらに多くのデータを集める場合はH市近郊のK市での調査も予定しており、その場合は今年度よりも多くの旅費や謝金等が発生することも考えられる。

  • Research Products

    (2 results)

All 2013

All Journal Article (1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] 校種間の文化の違いから見た、育ちに困難を抱える子どもへの支援の在り方 ―保育士、小・中学校教諭に対するインタビュー結果を手がかりに―2013

    • Author(s)
      稲垣馨
    • Journal Title

      埼玉純真短期大学研究論文集

      Volume: 6 Pages: 印刷中

  • [Presentation] インタビュー から見た 、困難を抱える子どもに対する支援 イメージ―保育士と小学校教諭の比較 から ―2013

    • Author(s)
      稲垣馨
    • Organizer
      保育学会
    • Place of Presentation
      中村学園大学
    • Year and Date
      20130511-20130512

URL: 

Published: 2014-07-24  

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