2012 Fiscal Year Research-status Report
AR技術を用いた能動的に仮想実験環境構築が可能な学習支援システム
Project/Area Number |
24501199
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima City University |
Principal Investigator |
松原 行宏 広島市立大学, 情報科学研究科, 教授 (30219472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 教育工学 / 人工知能 / バーチャルリアリティ / 反力デバイス / AR / インタフェース |
Research Abstract |
重要な学習方法である「発見的学習」を支援する上で,VR型の実験室は有益である.しかしながら,対象教材の実験環境の準備はプログラミングスキルを必要とするため,システム作成者しか設計できず,学習者が自由に実験環境を設計することは困難である.一方でAR技術が進展しており,ARで用いられるアイデアやインタフェースを活用することにより直接的な体験を伴いながら実験環境の設計が容易になると期待できる. そこで本研究では,体験型学習支援システム上のVR実験室において,実験環境そのものを学習者が設計できるようにすることを目的とし,具体的にはAR技術で用いられているマーカを用いて学習者の意図をVRシステムに伝達し,実験環境を自由に構築できるようにすることを目指している. 初等力学「滑車を用いた力のはたらきと仕事」の題材に関して,先行研究において,3種類のテンプレートパターンの滑車組み合わせを体験できるVR実験室を構築している.またこれは,そのテンプレートパターンでの滑車の糸にかかる力を,力覚を感じることのできるデバイスを用いて,実際に力を体験できるよう工夫してあり,体験を伴う学習ができるようになっている.本年度は,このプロトタイプシステムを拡張しテンプレートに含まれているパーツ(定滑車,動滑車,おもり,糸,天井や床の設定,等)を分解し,それぞれ独立したオブジェクトとして,テンプレート以外の形態を自由に設計することが可能となる手法の検討を行った.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
・AR技術を用いて学習者が自由に実験環境を設計できるためのメカニズムの検討について: VR実験室を実現するためには,各パーツを独立したオブジェクトとして定義する方法,学習者が実験環境空間に自由に配置したオブジェクトの設置位置の認識方法,設置されたオブジェクト間の接続関係の設定と全体としての接続関係の認識方法について検討する必要がある.そこで本年度は,AR技術で用いられているマーカ関連の手法を検討し,各マーカとパーツのオブジェクトを対応させ,マーカを自由に机上に配置させることによって滑車の実験環境が実現できるような仕組みを構築した.マーカの位置を認識させる手法はARtoolKitの手法を基に実現した.また取得した位置情報からオブジェクトの接続関係と全体のとしての接続関係を同定するアルゴリズムを設計し,正確に認識できることを確認した.本項目について当初の計画を概ね達成している. ・基本システムの設計(マーカを用いて自由に設計できることが可能なプロトタイプシステムの検討(定滑車2個,動滑車1個))について: 上述のアルゴリズムを組み込み,第1ステップの基本システムとして,定滑車2個,動滑車1個の組み合わせにおいて,自由に配置して設計することが可能となるプロトタイプシステムを完成させた.また動作検証実験を行い,任意の配置位置,オブジェクトの配置順序を変更しても正確に認識できることを確認した.本項目についても当初の計画を概ね達成している.
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Strategy for Future Research Activity |
・教育実践用プロトタイプシステムの設計(定滑車3個,動滑車3個)を実施: 平成24年度で,第1ステップの基本システムとして,定滑車2個,動滑車1個の組み合わせで動作するシステムの設計と実装を行った.平成25年度は,そのシステムを,定滑車3個,動滑車3個まで扱えるように,拡張する.拡張システムが完成すれは,原理的にはそれ以上の個数の滑車も扱えることが期待されるが,現在中学校や高等学校で使用されている教科書等を調査すると,例題や練習問題として扱われている問題は,定滑車3個,動滑車3個程度までで表現できるよう扱われている.そこで平成25年度は,定滑車3個,動滑車3個までを自由に配置して接続し,力と仕事の関係が理解できるように工夫することを検討する. ・実践の実施とシステムの定量的評価 次に教育実践用プロトタイプシステムを完成させる.最初に,すべての滑車パターンの組み合わせにおいて,任意の順序でオブジェクトを配置しても正確に動作するかを検証する.そのうえで,実物の滑車キットを用いて実験するケースと,提案システムを用いて実験するケースを設定し,それぞれの長所と短所を定性的に明らかにする.また,同実験において各ケースの実験作業の効率性,柔軟性,発見的学習への接続性,学習活動の有効性等を,定量的に検討する.最初に,大学研究室での実験室環境での実験を実施し,一定の効果が認められれば,中学生や高校生を対象とした実践を行い,考察を行う.またその実験結果に基づき,システムのユーザビリティ等を調査し,問題点の修正と拡張を行う予定である.
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本研究課題では,SensAble社のPHANToMを4セット以上必要とする.現有設備が2セットあり,平成24年度の本研究課題の経費で1セット整備した.平成25年度に更に1セット整備し,評価実験を実施する平成26年度までに,4セットの確保を目指す.システム開発用のソフトウェアとして,第一に,マーカを認識しCGを生成するため,画像処理プリケーションソフトウェアが必要である.また,具体的な教材として,3次元のオブジェクトを用いるため,3Dモデリングソフトが必要となる.これを平成25年度に整備する. また,1年に2回程度,研究会や全国大会で資料収集を行い,更に2回程度発表を行う.具体的に平成25年度は以下を予定している.(電子情報通信学会 教育工学研究会(関東地区2泊3日)資料収集,日本教育工学会全国大会(東北地区 2泊3日)発表,教育システム情報学会全国大会(北陸地区2泊3日)資料収集,電子情報通信学会教育工学研究会(関東地区2泊3日)発表,ICCE/ICALT等国際会議(アジア地区5泊6日)発表,など) また,システム開発のコーディング,テスト,評価実験等で,アルバイトを雇用する予定である.平成24年度の評価実験においてアルバイト雇用日数が少なく済み経費が7万円程度余ったが,平成25年度は規模の大きい評価実験を実施する予定であり,繰り越した費用をアルバイト雇用に充てる計画であり,2人×20日程度を予定している.
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Research Products
(14 results)